「マチネの終わりに」

「マチネの終わりに」
平野啓一郎
文春文庫
2019年6月25日第2刷

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「とんでもない暑さ」が続いたと思ったら、「とんでもない台風」がやってきた。台風10号。昨年の台風21号と比べると、雨は降ったがが、風は左程ではなく、一安心でした。ただし、西日本は、交通網が混乱。JR西日本は、早々に「計画運休」を発表しました。山陽新幹線だけではなく、在来線の特急なども軒並み運休。さらには、在来線も一部運休。おかげで、社員が通勤できなくなりデパートなども休業。

飛行機は、以前から、早々に欠航を発表していたのですが、鉄道は、土砂が線路に流入するなどの災害が発生するまで運行していました。そのため、災害が発生したときは、駅間に列車が停車することにより、乗客の閉じ込めなどにより、健康被害が発生していたらしいです。このことが、徐々に問題視されて、防災の観点からも「計画運休」に踏み切ったらしいです。

このことは、マスコミも、おおむな好意的に捉えています。しかし、そのうち、「オオカミと少年」的なことを言いだす識者が、きっと、現れるでしょう。しかし、そのときに、「人名は地球よりも重い」という言葉を思い出して、ポピュリズム思考の強い脆弱なマスコミが、キチンと論陣を張ることが肝要です。

毎日が日曜日になって、昼間の情報番組が、こんなに沢山あるとは知りませんでした。昔は、昼メロだったのですが・・・(いつのことか)。この情報番組が世論の形成に大きな役割を持っているように感じます。この情報番組のコメンテーターなる人たちが、いかに常識的な(常識は人それぞれですが)コメントをするか。この人選は、番組プロデューサーの力量でしょうか。

話はそれましたが、鉄道の「計画運休」の是非は、頻度が増えると、たぶん、これから議論を呼ぶでしょうが、・・・毎日が日曜日の輩には、関係ないかもしれませんが、ぼくは、間違いなく「Goodな取り組み」だと思っています。

余談が長くなりましたが、平野啓一郎さんの小説は、「日蝕」(芥川賞受賞作)以来だと思います。「マチネ」って、どういう意味?「マチネ」とは、フランス語で午前のこと、対義語として、「ソワレ」が、夕方のこと、らしいです。とくに、舞台興行の用語として、昼公演を「マチネ」、夜公演を「ソワレ」というらしいです。ゆえに、「マチネの終わり」とは、「昼公演の終わり」ということになります。

『蒔野はそして、一呼吸置いてから、最後に視線を一階席の奥へと向けて、こう言った。「それでは、今日のこのマチネの終わりに、みなさんのためにもう一曲、特別な曲を演奏します。(And now, at the end of the matinee, I will play one more melody --- a very special melody --- for you.)」
洋子は、その時になって、微かに笑みを湛えていた頬を震わせ、息を呑んだ。蒔野がこちらを見ていた。そして、「みなさんのために for you」という言葉を、本当は、ただ「あなたのために for you」と言っているのだと伝えようとするかのように、微かに顎を引き、椅子に座った。』


天才クラッシク・ギタリストの蒔野と国際ジャーナリストの恋愛物語。三度しか逢ったことがないのに、二人は、深く愛するようになるが、四度目の約束の行き違いで、お互い別々の人生を歩むことになった。その愛の結末が、「マチネの終わり」の「one more melody」

ベタベタの恋愛小説ではなく、クラッシク・ギターの世界とアラブ問題などの国際情勢という異次元の世界が、二人の恋愛のバックグラウンドとして絶妙に交差する記憶に残る小説でした。