「コーヒーが冷めないうちに」

コーヒーが冷めないうちに
川口俊和
サンマーク出版
2017年1月30日第40刷発行

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先週、宮本輝さんの「蛍川」を探していて、この本を見つけました。二年前に買って、読んでいなかった。なぜ?わかりません。初版が、2015年なので、2年間で40刷。大ヒット小説です。本屋大賞にも、ノミネートされ、この年の本屋大賞(「蜂蜜と遠雷」恩田陸・・・これも面白かった。)以上にブレイクしたような記憶があります。
まあ、とにかく、読み忘れていた本を、今、読むのも一興です。


ところで、先々週、久しぶりに神戸元町商店街をブラブラしていて、気づいたこと。元町大丸前から阪神西元町の間に純喫茶が多いこと。スターバックスなどの繁盛で、昔ながらの純喫茶は斜陽と思っていましたが、まだまだ、根強い人気があるということです。


でも、サラリーマンが、街の弁当屋で500円以内の昼食の時代に、コーヒーが一杯、400円から500円。まあ、煙草も、一箱が500円時代。嗜好品は、食事に勝るということですか?


思い出の喫茶店と言えば、学生時代に入り浸った2つの店。


一つは、「欅」。静岡の三島。富士の伏流疎水の側の喫茶店。大学に入学して、気なって、喫茶店でハイライトにムセイデいたものです。二つ目は、「青い鳥」。神田神保町。これも、学生時代、大学の近くで、授業の合間に、ショートホープを燻らし乍ら友達と駄弁っていた。


半世紀前の思い出です。

 

『とある街の、とある喫茶店
とある座席には不思議な都市伝説があった
その席に座ると、その席に座っている間だけ
望んだ通りの時間に移動ができるという』
ただし、そこにはめんどくさい
非常にめんどくさいルールがあった』

 
そのひとつが、

『過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、
そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ』

 
「望んだ通りの時間」に移動できるとすると、あなたは、いつに移動しますか?過去ですか?未来ですか?この手のお話の常道として、「決して、現実は変わらない」ということもルールの一つです。ぼくは、未来を除くのは怖いし、現実が変わらないなら過去に戻っても意味がないので、時間移動はご遠慮いたします。


それでも、どうしても、過去に戻ったり、未来に行ったりして、確認したいこともある。そういう事情があるお客が、この喫茶店の「その席」に座る。結婚を考えていた彼氏と別れた女、記憶が消えていく夫と看護師の妻、家業を捨てて家出した姉と家業を継いだ妹、喫茶店のオーナーと心臓病を患う妊娠した妻。


茶店の名前は、「フニクラフニクラ」。「ゆこう!ゆこう!火の山へ」は、親父が、火の山(田舎の有名なロープウェイのある山ぼ名前)に登るときに歌っていた歌。子供のときに何度も聞いて、このフレーズだけ覚えています。てっきり、「火の山」の歌だと思っていましたが、原曲は、「フニクラ・フニクラ」(イタリア歌謡曲)だったのです。


小説のラストは、地下鉄の座席で読みました。またまた、目と鼻から水があふれだして、なんとも、みっともない仕儀となりました。