「禅とは何か」

「禅とは何か」
(それは達磨から始まった)
水上 勉
中公文庫
2018年12月25日初版発行

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世の中、コロナ、コロナで騒然・・・沈滞していますが、現役の皆さんは、日々、感染の予防に、ご苦労をされているでしょう。とくに、医療関係者におかれては、増え続ける感染者への対応で、過去に経験をしたことのない状況になっていると思います。


聞くところによると、マスクがない、防護服がない、ベッドがない、人工呼吸器がない・・・など鉄砲を弾もなしで、精神論でコロナと戦っているご様子。まるで、大東亜戦争末期の竹やりでB29を打ち落とすようなことです。21世紀に人間の無力を感じてしまいます。


年金生活者は、外出を控えながら、毎日、テレビのニュースやワイドショーで、皆様のご苦労にエールを送ることしかできません。まことに、申し訳ない仕儀ではありますが、せめて、ネットでの買い物など、少しでも、経済を回すために役立つことを考えています。


下落する株価の下支えは、個人株主の奮闘にあると、心を入れ替えて、個人株主の本来の姿である「逆張り」に精を出しています。ところが、残念ながら、資金力がないので、矢はつき、力もつきて、これ以上の打ち球も枯渇してしまいました。さてもさても、情けないことです。


こういう時だからこそ、心を落ち着けて、冷静になることが必要です。そのための、アイテム。そうです。「禅」で心を落ち着けましょう。


このところ、「禅」に興味を持ち、すこし、関連本を読んでいたところ、入門書として「禅とは何か」(水上勉)に辿り着きました。


禅的生活」(玄侑宗久)、「日曜に読む荘子」(山田史生)、「無心のダイナミズム」(西平直)、「禅マインドビギナーズマインド」(鈴木俊隆)、「白隠 禅画の世界」(芳澤勝弘)など。なぜ、「禅とは何か」をチョイスしたか?


「無心のダイナミズム」は、学術書だったので、正直、面白くなかった。そこで、文書のプロ(作家、とくに小説家)が書いたものがいいのでは・・・と考えました。ありました。水上勉さん。2004年に逝去さていますが、「雁の寺」で直木賞受賞。なんと、「飢餓海峡」「五番町夕霧楼」などの作品は有名です。


「五番町夕霧楼」は、松坂慶子主演の映画を見た記憶があります。えっ、こんな官能的な世界を描いた小説家が、「禅とは何か」ですか。そうなんです。水上勉さんの略歴をみてみると、幼くして京都の禅寺に預けられ、9才の時に得度を受けて、19才で禅門を飛び出したらしいです。


水上勉さんの著作には、「一休」、「沢庵」、「良寛」と禅宗の僧侶の小説があり、その作品で数々の賞を受賞されていました。たぶん、「禅とは何か」は、これらの作品を書くために勉強された成果の集約だと思います。


 達磨(520年)に始まる中国禅から、栄西臨済宗)(1187年)、道元曹洞宗)(1223年)、隠元黄檗宗)(1669年)が創始した日本禅の歴史、そして、それまでの宗派との関係などが、小説家の文章で簡潔かつ明晰に書かれており、「禅」というより「禅宗」の入門書として読みごたえがありました。


ここから、さらに、「一休」(1481年遷化)、「沢庵」(1645年遷化)、「良寛」(1831年遷化)と、次のステップに進んでいこうと思っています。

 

『うらをみせ おもてをみせて ちるもみじ』(良寛 辞世)