「おもかげ」

「おもかげ」

浅田次郎

講談社文庫

2020年11月1日第1刷発行

 

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今年は、節分が、2月2日とのこと。えっ、節分って、2月3日じゃなかったっけ?今年は、2月3日が立春、その前日が、節分です。えっ、なんで???Why??

 

『地球が太陽を1周する公転周期は、365日と6時間弱。4周するには、4年と1日ほど必要だ。

このため、実際の気候と暦が合うように、4年に1度のうるう年に2月29日を追加して補正している。

ところが、この補正で、約45分増やし過ぎとなるため、400年の間にうるう年を3回減らして帳尻を合わせている。

こうした暦のずれと補正の繰り返しによって、立春などの日付が変わる。

節分も、2月2~4日の間を行き来してきた。1984年は2月4日だったが、翌85年から2020年までは2月3日が続いた。今後しばらくは、うるう年の翌年に2月2日となる。』

 

らしいです。わかりましたか?ぼくは、理解不能でしたが、節分が、2月2日になるのは、124年ぶりで、2月4日になったのは、昭和59年(1984年)37年ぶりらしいです。うむ、もう、結婚していましたが、まったく、記憶にございません。

 

なお、これからは、ちょこちょこ2月2日になるらしいです。これが、またまた、理解不能です。

 

 以上、余談でした。

 

 浅田次郎さんの「おもかげ」。ちょっと前に読了した「地下鉄(メトロ)に乗って」の姉妹版みたいですね。両小説とも、舞台は、東京メトロ

 

 はじめに、提言します。

 

両方ともに、お薦め。☆5です。どちらを先に読めばいいか?うむ、前者は、母親を、後者は、父親の思い出。どちらでも、OKです。ぼくは、発刊順で、メトロ→おもかげ、でした。

 

 竹脇正一は、総合商社の部長職から関連会社の役員として転出。そして、65歳で役員定年を迎えた。ところが、今、病院の集中治療室にいる。意識不明の状態である。定年の日、送別会の帰りに、地下鉄の車内で倒れた。荻窪の自宅から会社までの、通い慣れた丸ノ内線の車内である。そして、新中野の駅から担ぎ出された。

 

 正一は、集中治療室のベッドから、小旅行を体験する。そのナビゲーターは、マダム・ネージュとのクリスマスのディナー、入江静との海岸でのランチ、カッちゃんとの居酒屋でのひと時、そして、峰子との語らい・・・みんな、夢とは思えないほど、リアルだった。とても、危篤状態の重病人とは思えない。

 

 正一の肉体は、時には、青年時代、時には、壮年時代に戻る。そして、地下鉄の中で、幼くして亡くなった息子と出会う。

『ふと、六十五年の人生は短すぎるな、と僕は思った。

 捨て子の境遇が幸福だなどと、強がりにもほどがある。正しくは不幸を挽回したのだ。

 だが、六十五年で終わったのでは、帳尻が合わない。人の人生が均等な禍福で糾われているとするならば、このさきまだ十五年や二十年の幸福な時間が、余っていなければおかしいと思う。』

 

 今のぼくは、七十五歳の健康年齢までの幸福を求めている。やりたいことが、湧き水の如く溢れてくる。もっと、時間が欲しい。でも、何時か、正一のように集中治療室のベッドに横たわることになるのだろう。そのとき、ナビゲーターは、どんな小旅行に連れていってくれるのでしょう。