「イノセント・デイズ」

「イノセント・デイズ」

早見和真

新潮文庫

令和元年6月5日第29刷発行

 

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久しぶりに、三宮高架下(センイ商店街)から元町高架下(モトコー)を経由して、湊川神社まで歩きました。センイ商店街と言っても、生地屋さんは、昔ほどは営業していません。緊急事態宣言中なので、お客さんが少ないからかも?

 

三宮高架下は、そこそこ、営業していますが、元町高架下になると、もう、ほとんどシャッターが閉まっています。カラフルなシャッターだけが、なんだか、妙に、寂しさを助長するようです。

 

ところどころ、高架の耐震補強工事で、通行できなくなっています。戦後、闇市から現在に至るらしいですが、JR西日本は、高架下の再開発を計画しているのか?店舗の立ち退きを求めるだけで、将来計画は明らかにしていないらしいです。さて、どうなるのかな?

 

昔から、モトコーは、デインジャラスな雰囲気がありましたが、いまも、球の切れた蛍光灯が、チカチカと光って、人の通りもなく、ちょっと、不気味ですよ。夜は、絶対、歩けないよね。とくに、一人では!

 

でも、そういった場所が、どんどんなくなっていくのも、何だか、寂しい気もします。街は、雑多なものが、ゴチャゴチャと存在して、いろんな人が行きかった方が、面白いでしょう。

 

高層ビルばかりで、しかも、街区は、きれいにデコレイトされたエリアだけの街は、味気ないですよね。どこの街でも、鉄道の高架下には、なぜか?危険なにおいがするのが、おもしろい。あ~、昭和は、遠くなりにけり。

 

さて、早見和真さんの小説は、初見です。

 

「おはよう関西」(NHK)「今年にかける」のコーナーで紹介された早見和真さん。「ザ・ロイヤルファミリー」で山本周五郎賞を受賞とのこと。神奈川出身で、5年前に松山に移住した。いま、もっとも注目を集める小説家の一人と紹介されていました。

 

そこで、「ザ・ロイヤルファミリー」は、まだ、文庫本になっていないので、先の楽しみとして、日本推理作家協会賞を受賞した「イノセント・デイズ」を読んでみました。

『足音は部屋の前で止んだ。

「1204番、出房しなさい。」

女性刑務官は毅然と言いながらも、目を赤く潤ませている。話をする機会のあった唯一の刑務官だ。そう年齢の変わらない彼女に申し訳ないという思いが真っ先に湧いて、幸乃は逃げるように視線を逸らした。卓上のカレンダーを視界に捉えた。

九月十五日、木曜日。その日付に運命など感じない。長かった。あまりにも長すぎた生涯にようやく幕を下せるのだ。六年間、ずっと待ち望んだ日だ。』

 

田中幸乃は、元彼の家を放火して、元彼の妻と子供2人を焼死させた罪で死刑を宣告された確定死刑囚。

 

彼女の幸福だった少女時代から、一転する不幸な出来事、そして、その後、中学時代の「ある事件」、そして、元彼との出会い、でも、彼女は、いつも「必要とされない存在」だった。そして、凶行に至る。

 

『読後、あまりの衝撃で3日ほど寝込みました・・・』(文庫本の帯)

 

寝込むことはなかったけれど、小説の迫力には圧倒されました。この小説は、推理小説なのか?死刑存廃の社会派小説なのか?「イノセント・デイズ」とは、「罪のない日々」なのか?早見さんの本、もう一冊、買いました。