「身代わり」

tetu-eng2011-01-16

「身代わり」
 西澤 保彦
 幻冬舎
 2009年10月10日第2刷発行
 1400円(神戸市立西図書館)

この小説では、章立てが「Rendezvous1〜8」となっています。普通は、「第1章」という書き方ですが、最近読んだ「KAGEROU」(齊藤智裕(水島ヒロ))では、ちょっと気取って、「Chapter1」と、まあ、ここまでは解るとして、「Rendezvous1」という表現は始めてみました。「ランデブー」こういった章立ての表現もあるのでしょうか?直訳すれば「待ち合わせ1」??「集合1」?? 

『「いろいろあったけど、もう吹っ切れました、というか。はい」
 と、その男子学生は照れ笑いのような表情で何度も頷いてみせた。銀縁メガネを掛けた、まるで女の子のようにつぶらなふたえ目蓋の瞳が、ただでさえ童顔なのを、さらに幼い印象にしている。
 「ま、そんな感じ、ですかね」
 キャンパスでは、「ソネヒロ」「ソネヒロ」と呼ばれていたため、耳慣れない苗字だなとは思いつつ祐輔も「ソネヒロくん」と認識していたのだが、それは小学生の頃からの渾名で、本名は曽根崎洋だという。』

8月17日。夏期休暇も半ば過ぎの国立安槻(あつき)大学のコンパのあと、「ソネヒロ」は、洞口(ほらぐち)町児童公園で殺害された。なぜ、「ソネヒロ」は、コンパのあとに、学生アパートとは逆方向の洞口町へ行ったのか?しかも、目撃者の証言によると、「ソネヒロ」が女性に乱暴をしようとして、反撃され、はずみで持参した文化包丁が自分の腹部に刺さり死亡したとのことである。しかし、祐輔が、「ソネヒロ」と別れた時、彼は、何も持っていなかった。ただ、別れ際に、祐輔は、吸いかけの煙草の箱を「ソネヒロ」に渡した。
一方、私立藍香(あいか)学園の高等部二年生の鯉登(こいと)あかりが、自宅において殺害された。その殺害現場には、もう一人、鎌苑(かまくさ)交番勤務の明瀬(みょうせ)巡査の死体が横たわっていた。しかも、検視の結果、鯉登あかりと明瀬巡査の推定死亡時刻に4時間の違いがある。明瀬巡査は、町内の挨拶回りに出かけ、その途中で鯉登宅を訪れたということが、聞き込み捜査から判明している。なぜ、二人の殺害時間が、4時間も違うのか?鯉登あかりと明瀬巡査との間には、まったく接点がない。
小説は、この2つの事件の捜査の進展を、交互に進行させる。そして、やがて、この2つの事件が1本の線でつながる。主人公は、辺見祐輔。国立安槻大学の学生。そして、祐輔の大学の後輩の羽迫由起子(渾名「ウサコ」)、同級生の匠千暁(渾名「タック」)、高瀬千帆(渾名「タカチ」)。学生4人のミステリー小説は、シリーズもので、「身代わり」は、第6作目だそうです。この小説の最初から、登場人物が渾名の連続で、何だか、ゴチャゴチャして分かりづらかったのは、その為だったのです。
西澤さんの小説は、初めて読みましたが、この小説は、ほとんどが会話形式で書かれており、情景描写、心理描写が少ないため、物足りなさは否めません。が、その分、読みやすいということは言えます。ミステリー小説、推理小説としては、設定も単純のような感じもします。あとがきで、著者自身が反省していますが、初めてこのシリーズを読んだ読者には、不親切な体裁になっています。と言うことは、「祐輔」「ウサコ」「タック」「タカチ」の4人組を知っていることが予定されているということです。まあ、シリーズものは、体外にそういうことなのですが・・・。