「オレたちバブル入行組」

tetu-eng2011-05-01

「オレたちバブル入行組」
池井戸 潤
文春文庫
2007年12月10日1刷
2010年12月15日7冊
690円

GW前の木曜日。久しぶりに、一人で、三宮の繁華街をふらついて、スナックA奈の止まり木に納まりました。途中、酒屋さんで「ペリエ」を買って持ち込むのも久しぶりです。先客がお二人。以前に、一緒になったことがあります。先客と、カラオケで歌を歌っていたところに、10年前からのお馴染みKさん登場。Kさんと話をしている間に、ボックス席に2人、3人と千客万来。ママさん、忙しく、立ち回り始めて、「目が回りそう」なんちゃって。そう言えば、今週、一見のお客さんで、「梓林太郎」さんが、来られたとのこと。山岳推理作家の第1人者ですが、残念ながら、私は、読んだことはありません。ママさん、本にサインを貰ったとご満悦。何だか、福の守のご来臨なのかもしれません。

『「粉飾を見破れなかったのが、全てだな」
 支店長の浅野匡は、深く嘆息した。その言葉に込められた微妙なニュアンスが気になったが、半沢直樹は黙っていた。
 大阪市西区四ツ橋筋と中央大通りがクロスする交差点にある東京中央銀行大阪西支店、その支店長室だ。メガバンクの一角、東京中央銀行の中でも有数の大店らしく、広々とした室内には執務用デスクと革張りの応接セットがおいてある。
 そのソファに、融資課長の半沢は部下の中西英治と並んでかけていた。浅野は、向いの肘掛椅子で、苦悩した表情を浮かべて脚を組んでいる。』

半沢直樹は、バブルと言われた就職「売り手市場」のときに、都市銀行の上位行である産業中央銀行に就職した。同じ大学から内定とともに池袋支店に拘束された、渡真利、近藤、押木、苅田の五人が、それぞれに夢を抱き、希望に胸を膨らませて、銀行の門をくぐり、それから、バブルがはじけ、銀行は、護送船団方式と呼ばれた時代から、合従連衡を繰り返し、産業中央銀行も、今は、東京中央銀行と様子が変わった。半沢は、大阪西支店の融資課長。ある時、支店長から持ち込まれた西大阪スチールへの五億円の融資に、やや、疑問を持ちながらも、支店の実績を上げるために、融資を実行した。ところが、融資実行後、間もなく、西大阪スチールが不渡りを出した。

『「一件五億はちょっとひどいな」
 渡真利はいうと、持ち上げた焼酎のコップ越しに半沢の表情をうかがった。「本部でも噂になっているぞ」
渡真利は融資企画部グループ調査役になっていた。
「しょうがねえだろう。支店長が強引にとってきた案件だ」
「それが通用すればいいけどな。お前んとこの支店長、最近、よく関西本部に顔を出してるらしいぞ」
西大阪スチールが第1回不渡りを出して、ちょうど1週間が過ぎていた。
「詳しいことはわからないが、根回しじゃねえか」
「何の根回しさ」
「責任逃れの画策ってところだ」』

ここから、半沢の債権回収に向けての必死の活動が始まる。その過程で、今回の融資についての銀行内部の様々な動きも、併せて、始まる。池井戸さんは、三菱銀行の勤務経験をお持ちです。したがって、銀行内部の事情については、小説の中でも、詳しく表されています。銀行の融資の実行までの過程、不渡りが出た時の銀行の対応、その後、債権回収に向けての動き。さらには、銀行内部の支店に対するチェックシステムなど、この小説を読んで、銀行の裏事情を垣間見ることができます。小説は、企業小説のようでもあり、それだけではなく、サラリーマンに共通する会社という組織の中での生き方を描いた小説のようでもあり、中間管理職の組織への挑戦の代弁をしているようです。