「キケン」

tetu-eng2013-10-14

「キケン」
 有川 浩
 新潮文庫
 平成25年7月1日発行
 550円(税別)

 ちょっと、気になること。ドラマ「半沢直樹」の最終回の「DO!GE!ZA!」の影響で、土下座を強要されるという事件が発生しているとのこと。そもそも、土下座は、謝意を表すという行為ではなく、敬意を表すという行為です。例えば、参勤交代の行列に、土下座する。何時から、変わったのかは、日本の文化の変遷であり、ご専門の方にお任せします。

 それはさておき、僕は、ついに「還暦」を迎えました。どうも、おめでたいことのようです。まあ、昔は、人生五十年の時代であれば、長寿としておめでたいことでしょうが、現代は、年金受給年齢が六十五歳になり、まだ、現役として、働かなければオマンマの食い上げです。めでたさも半分くらいでしょうか?でも、これからは、五十代以上に体力が音を立てて衰えていくのでしょう。犬は、十三歳を超えると急に動かなくなるそうです。僕も、六十歳を超えて、動けなくなるのでしょうか?これは、老いへの一抹の不安かもしれません。しかし、食うためには、そんな情けないことは言っておれません。「何とかなるさ」と現実逃避の読書三昧を続けていきましょう。これからも、よろしくお願いいたします。

 そんな前置きで、「キケン」は、痛快青春群像小説です。

『 某県某市、成南電気工科大学ーーほどほどの都市部に所在し、ほどほどの偏差値で入学でき、理系の宿命として課題が鬼のように多い、ごく一般的な工科大学である。
 そして、この成南大に数ある部活の一つに「機械制御研究部」があった。
 略称【機研(キケン)】
 しかしーーこの略称が部にまつわる様々な事件から、ある種の畏怖や慄きを以て名付けられたことは、機研黄金期の在学生には広く有名だった。
 機研(キケン)=危険。
 その黄金期。【機研】は正しく危険人物に率いられた危険集団であった。』

 危険人物。部長・上野直也(二回生)、あだ名は、「成南大のユナ・ボマー」。副部長・大神宏明(二回生)、あだ名は、「名字を一文字隠した大神」。三回生は幽霊部員のみ。四回生は、研究が忙しくて部活休眠。活動部員は二人。で、新入生の勧誘から小説は始まります。捕まったのが、電気工学科の元山高彦と応用電子科の池谷悟。

『「ユナ・ボマー?」
 元山は目を剥いた。世界一有名な爆弾魔の名前が渾名になる部長って一体ナニモノだ?一体ナニやらかしてその渾名?
 「そんで一文字隠したってのは・・・・」
 「大と神の間に「魔」が隠れてるって」
 「ユナ・ボマーと大魔神のコンビかよ・・・」
 元山は思わず顔をしかめた。大魔神大魔神で一体どう大魔神なのか。』

 ここまで読むと、この大学で、どんな事件が起こるのか?と、ワクワクするのですが、まずは、学祭で「キケン」が出店する「ラーメン屋」でのひと騒動。これが、奇想天外。そして、理系の真骨頂、ロボット相撲大会への出場。この結末が、「ユナ・ボマー」。そして、一回生による空気銃騒動。そんなハチャメチャな青春時代を懐かしそうに妻に話をする元山。そう、この小説は、元山君の回想なのです。って、種をバラしちゃいけませんね。こんな青春時代が、誰しも、何年間は、あったでしょう。細君に言えないことも含めて!