「木暮荘物語」

tetu-eng2015-03-15

「木暮荘物語」
三浦しをん
祥伝社文庫
平成26年10月20日第1刷
600円(税込)

「ああ、私はこの物語がとても好きだ。」小泉今日子さん(「読売新聞」2011年2月6日書評)と、文庫本の帯の文字が目にとまりました。

キョンキョンが、読売新聞に書評を書いているのは知っていましたが、キョンキョンのお薦めとあれば、読まないわけにはいきません。なんと言っても、還暦過ぎのおじさんは、アイドル時代からキョンキョンのファンですから。

この手のやや古いアパート(むかしの文化住宅っぽい)の住人を題材とした小説は、ちょうど1年前に、「真綿荘の住人」(島本理生)を読んでいますね。それ以前にも、短編連作で書きやすいのか、多くの作家さんが、書いているので、何作か読んだ記憶があります。そんなことは、三浦しをんさんも承知の上でのチャレンジだと思います。

舞台は、木暮荘。

小田急線の世田谷代田駅、ゆるやかな起伏のある細い道を、井の頭線新代田駅方向へ五分ほど歩く。生け垣に囲まれた一戸建てと、古い木造アパートが混在した静かな住宅地。

『角を曲がると、木造二階建ての木暮荘の正面が見える。建物の外壁は茶色いペンキ、木製の窓枠は白いペンキで塗ってある。チョコレートと生クリームでデコレーションされた、小ぶりのケーキみたいだ。近寄ってよくよく見てみれば、分厚く塗られたペンキが凹凸を作り、ぬかるみが固まったみたいだが。ペンキの剥げた箇所を発見次第、大家が素人ながら刷毛をふるっているためだろう。』

間取りは、玄関ドアを開けると、右手にキッチンの流し台、左手はトイレ(和式)。四畳程度のキッチンスペースに後付けされたシャワーブースがあり、お風呂はありません。その奥が6畳の和室と一間の押し入れとなっています。築年数は不明。木製の窓枠なので、かなり古いと思われます。日当たり良好。

こういった小説を読むと、学生時代のアパート?を思い出します。京王線桜上水駅を降りて、線路沿いを新宿方面に5分歩くと、左手に茶色のペンキで塗られた2階建ての鉄骨プレハブ?の古いアパートが「池田荘(名前は忘れました)」。玄関前には、ヤツデがうっそうと茂っています。玄関を開けると、右横に大きな下駄箱があり、正面は2階へ上がる階段。

僕の部屋は、1階だったので、左手に廊下を歩くとドア3つめの部屋です。ちなみに、廊下の突き当たりは、共用トイレ、その手前に共同炊事場(ただし、ガス設備はない)。ドアを開けると、四畳半の板張りの部屋に作り付けのベッドとロッカー。窓はねずみ色の鉄枠。当然、お風呂はないので、歩いて10分の「富士見湯?」の終い湯の常連でした。築年数は不明。日当たり悪し。ちなみに、グーグルマップでは、もう、そういった物件は存在しません。当たり前か?40年以上前のことです。

話はそれましたが、この木暮荘には、全6室ありますが、101号室、大家の木暮じいさんと犬のジョン、102号室、女子大生の光子、201号室、サラリーマンの神崎、そして、203号室、花屋の店員の繭(まゆ)の四人が、生活しています。

平穏な生活なのか、ドタバタの生活なのか、三浦しをんさんにしては珍しいHな描写もありますが、まったく、嫌らしさを感じさせない、日常の一風景として溶け込んでしまっているのは、三浦さんの作風のなせる技ですね。