「明日の子供たち」

tetu-eng2018-06-24

「明日の子供たち」
有川 浩
平成30年4月10日第1刷
幻冬舎文庫

月曜日のこと。

朝、出勤途中、神戸市営地下鉄7時56分西神中央発。「あ〜、月曜日はしんどいな。日曜日のテニスの疲れも残っているしね。」なんて、思いながら、いつものように始発電車の座席に「どっこいしょ!」と座って、文庫本を読みはじめました。ちなみに、一説によると、「どっこいしょ!」は、「六根清浄」がなまったのが語源らしいです。って、余談でした。

ところが、次の駅の西神南に到着する前に、乗客のスマホが一斉にけたたましく鳴り始めました。もちろん、ぼくのスマホも!そして、電車が停車。「うむ、やばい!」スマホは、緊急地震速報を表示。車内放送「緊急地震速報のため、電車は一時停車します。」ぼくは、閉所恐怖症。電車が走っていれば問題ないのですが、駅以外で停車すると、嫌な気分になり始めます。気持ちを落ち着かせていると、しばらくして、動き出して西神南の駅に入線。

その後は、ラッキーにも徐行運転をしながら、各駅の前で信号停止、各駅で一時停車を繰り返しながら、なんとか三宮に到着。その間、スマホで情報を見ながら気分を紛らわしていました。細君や友人からも、ラインで状況の連絡があり、みなさんにご心配をかけました。

ぼくは、無事でした。

いまでも、大阪では、避難者も居るらしいです。1週間以内は、同規模程度の余震に対して、注意が必要という物騒な話もありますが、「なまず」さん、このまま、動かずそっとしておいてください。再度、余談ですが、「梅田」という地名は、「埋め田」から変わったらしいです。もともと、地盤の緩いエリアらしいことを数年前の防災の講演会で聞いた記憶があります。

今週の読書雑感は、ぼくの好きな作家さん有川浩さんの作品です。

この作品は、「児童養護施設」の子供たちと職員の物語です。そもそも、有川さんがこの作品を手がけた理由は、児童養護施設の出身者からの一通の手紙だったらしいです。その手紙の差出人が巻末の解説を書いています。なんと、神戸医療福祉大学の学生さんでした。

『「施設のこと知りもしない奴に、どうしてかわいそうなんて哀れまれなきゃいけないの?・・・どうして、」
「かわいそうな子供に優しくしてやろうって自己満足にわたしたちが付き合わなきゃいけないの?わたしたちは、ここで普通に暮らしているだけなのに!わたしたちにとって、施設がどういう場所かも知らないくせに!」』

うむ、最近、児童虐待など悲惨なニュースが多いですが、親の愛を得ることができない子供たちの世界として、「児童養護施設」があるのは知っていましたが、その実態は、まったく知りませんでした。有川さんは、綿密な取材に基づき、有川さんの視点で「児童養護施設」での生活や課題をぼくたちに紹介してくれました。

『「・・・・わたしは、施設に来て、ほっとした。ちゃんと毎日ごはんが食べれて、お腹すかなくて、ゆっくり眠れて、学校にも行かせてもらえて・・・・先生たちも、ちゃんとわたしの話を聞いてくれるし、何ていいところなんだろうって思った。」』

しかし、先生は親ではないし、施設の目的は、子供たちを自立させることらしい。施設は、高校を卒業するまで。それから先の人生は、子供たちは支援なしで自立しなければならない。この小説も、政治家の皆さんに読んでいただきたい一冊です。