「夜明けの街で」

tetu-eng2012-05-27

お知らせ
 今週から、「読書雑感」のスタイルを変更します。「本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。」の注意書きの記載ある本、ない本があります。著作権法を詳細に読むのも面倒なので、読了後の本の表紙をスキャンして掲載していましたが、法律違反と言われては、心外なので、表紙のスキャン画像の掲載は止(よ)すこととしました。
固より、このことで、商売をしようという魂胆などさらさらありませんが、痛くもない腹を探られるのも、これも不愉快です。樹木希林さんは、自宅のお電話のメッセージで「私の映像は、許可なく自由にお使い下さい。」とのコメントを流しているそうです。出版社にも、この程度の度量が欲しいものです。まあ、これで、本の売り上げが、減収となっても、一切、関知いたしません(何てことは、ないですね。)。
なお、今週の1枚は、「櫛崎城址浜」我が母校である高校の裏手は、櫛崎城址。そこから関門海峡を一望して、九州は、眼と鼻の先です。

「夜明けの街で」
東野圭吾
角川書店
平成19年6月30日初版発行
1600円(税別)(神戸市立図書館)

図書館では、東野圭吾さんの本は、なかなか、手に入りませんが、偶然、本書を書棚で見つけました。最近は、本屋では、東野圭吾コーナーが常設されているほどの人気作家ですね。最初に、感想を書きますが、「粗雑乱筆の誹りを免れず」でしょうか?東野さんは、書き過ぎではないでしょうか?残念ですが、小説の構成、表現描写など、少し、乱雑になっているようです。

『不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。妻と子供を愛しているなら、それで十分じゃないか。ちょっとした出来心でつまみ食いをして、それが元で、せっかく築き上げた家庭を壊していますなんて愚の骨頂だ。
 もちろん世の中に素敵な女性はたくさんいる。僕だって、目移りしないわけじゃない。男なんだから、それは当然のことだ。でも目移りするのと、心まで奪われるのとはまるで違う。
 もう一度言う。不倫する奴なんて馬鹿だ。』

これは、小説の冒頭ですが、小説の冒頭から、これは不倫小説であることを宣言しています。案の定、主人公の渡部は、派遣社員の秋葉(あきは)と新宿のバッテイングセンターで偶然に知り合います。それまで、同じ部署の秋葉のことは、よく知りませんでしたが、やがて、と言うか、ほとんど、すぐに渡部と秋葉は、只ならぬ仲、要するに「不倫関係」に発展していくのです。それでも、東野さんの小説は、どろどろした不倫小説の愛憎劇ではありません。

『「来年の四月になれば・・・・」
 えっ、と僕は彼女の顔を見た。彼女はカクテルグラスを両手で包み、深呼吸した。
「正確にいうと、三月三十一日。その日が過ぎれば、いろいろとお話しできるかも」
「それって、君の誕生日か何か?」
「あたしの誕生日は七月五日。蟹座」
 覚えておこう、と僕は思った。
「その日はね、あたしの人生にとって、最も重要な日なんです。その日が来るのを何年も・・・」そこまでいってから、小さくかぶりを振った。「変なことをしゃべっちゃた。忘れてください。」』

 さて、ここから、東野小説の真骨頂。不倫相手の秋葉は、15年前のある殺人事件に係わっていました。その殺人事件は、時効目前。いよいよ、不倫小説からサスペンス小説に、鮮やかに転換していきますが、読者は、「はあ、はあん〜」という風に、結末を予見できるでしょう。そこに、サスペンス小説として、やや、物足りなさを感じます。