「少女キネマ」

tetu-eng2017-06-18

「少女キネマ」 
(或は暴想王と屋根裏姫の物語)
一(にのまえ) 肇(はじめ)
平成29年2月25日第1刷発行
角川文庫

入梅してから、ちっとも雨が降りません。それどころか、乾燥注意報が発令されています。天気予報でも、雨の降りそうな気配がありません。いわゆる「空梅雨」なのでしょうか?長期予報では、6月は、平年より多い。7月は、平年並み。ということだったと思いますが・・・・??雨が降らないと、お百姓さんは困ったことになるでしょうし、夏場の水不足も心配です。

一人と一匹の生活がスタートして1週間。ぼくは、段々と、単身赴任生活のリズムに慣れてきました。一方、相棒は、どうなんでしょうか?忠犬ハチ公みたいに玄関のドアの前で、飼い主の帰りを待ちわびています。彼のストレスが溜まらないように、朝と夕方は欠かさず、散歩に連れて行っています。夜も、彼とジャレアッテ遊んでいますが、どうなんでしょう。雨が降らないのは、朝夕の散歩には、好都合ですが・・・・・。

共謀罪」法の強行採決で、国会は大騒ぎです。今、オウムのサリン事件が起これば、おそらく、「共謀罪」全党一意で可決だったのでしょうか?「忘却とは忘れ去ることなり」赤軍派のハイジャック、爆弾テロなど、30年前の日本は騒然としていました。何時また、日本でテロ事件が発生しても、おかしくない情勢ですが・・・・。身内の者が、被害にあってから、騒ぎ出しても遅いと思いますが・・・?司法の独立を信じましょう。

さて、読書雑感ですが・・・

そのまえに、この小説の作者の苗字が奇天烈・・・なり。一(にのまえ)さん。何て読むのかな??と考えたら、一(いち)、二(に)、三(さん)で、二(に)の前だから、(にのまえ)と読むのでしょう。本名なのか?ペンネームなのか?それは、知りませんが、また、他に同姓の方が、実在するのか?日本語って、面白いね。ユーモアがあります。英語などの外国語には、同様な洒落た用法はあるのでしょうか?

天井裏に少女が潜んでいて、突然、現れたら、あなたは、どうしますか?作者の名前が奇天烈ならば、小説の舞台設定も奇天烈です。ぼくの家は、マンションなので、そんな心配はありません。少女の名前は「さち」。5年前から天井裏を住処にしていたらしい。下の住人は、大学生の戸倉和成(20歳)。

「FUJIKA―Single8−ZC3000」

これは、八ミリカメラの名前です。和成は、高校時代の親友である才条と同じ大学に入学して、彼の遺作で未完の映画を完成させるために奮闘します。その映画のタイトルは、「少女キネマ」。そして、この映画には、天井裏の「さち」が深く係わっていました。

『「少女キネマ」の空白のラストシーンに何を入れるべきなのか、延々思考する。が、まさに空白である。何も思い浮かばない。ずしりと重い罪悪感で身体が地に沈むようであった。
「ミロのヴィーナスは腕がないから評価される、か」
伊祖島氏の言葉を反芻してみた。当たり前のことだけれども、観客それぞれの嗜好を持つ。その想像力で補完された映画こそが完璧な映画ではないのか。観る人のそのときの状況に合わせられて、観る度に違う印象を受ける映画、ずるいではないか。そんなの勝てるわけがない。
「才条、おまえはそこを目指していたのか」
僕は天井を見上げて呻いたが、誰も答えてくれなかった。』

この小説、一(にのまえ)さんの処女小説だそうです。スピード感がある面白い作品だと思います。