静寂の子

静寂の子

■静寂の子
仁村靖季は、「Burns」という子供たちのため北海道で学習塾を主宰しています。学習塾と言っても、夏や冬は、休みを利用して、海や山の自然に親しむためのアウトドアでの遊びを体験させるツアーも企画、運営しているのです。このアウトドアのツアーには、学習塾の子供はもちろん、親も希望により参加することができます。靖季は、そんなアウトドアの達人です。妻の百合香も、この学習塾を手伝い、百合香との間に3歳になる葵という女の子がいますが、この葵も、アウトドアツアーには、一緒に、参加するのです。そのツアーの最中に、一本の電話が靖季に入り、物語はそこから始まります。
以前ツアーの参加したこともあり、海の面白さを靖季から教わった戸田勇が、積丹の海で溺死したとの連絡です。積丹の海は、素人では難しい、流れの速い危険な海。何故、勇は、そんな危険な海に潜ったのか。勇に、海の面白さを教えた靖季は、責任を感じます。そして、勇の未亡人、理津子とその子供たちのもとに、足しげく通い始めます。そんな、靖季の行動から、やがて、百合香の心に、そして、ついには、理津子の心にもさざ波が立ちはじめます。そのさざ波は、やがては、大きなうねりとなり、幼い葵の心にも、少なからず影響を与えて行きます。
著者は、谷村志穂さんですが、経歴を拝見すると北海道大学農学部で動物生態学を専攻されていたという異色の作家さんです。どうりで、小説の舞台が北海道で、小説の中でも、最後は、「とど」のウオッチングツアーということで、谷村さんならではのシチュエーションなのでしょう。小説は、単純な不倫小説ではなく、何となく、主題が掴みづらい小説ですが、何となく、読み切ってしまいました。最後は、靖季、百合香そして葵の3人が海辺で寄り添って、次の会話で終わります。「静寂の子」のタイトルは、この最後の会話なのでしょう。

「明日は、どこへ行きますか?」
「葵は、どこへ行きたい。」娘はじっと両方の親の顔を覗き込むといった。
「静かなところ」
男は、大きな片方の手で娘の頬を撫でると、
「そうだね、静かなところへ行こう。」
そう囁いていた。

ところで、谷川さんの小説で、映画化された「海猫」という作品があります。私は、小説を読んだわけではなく、Sくんが、伊東美咲の映画であるということで、DVDを貸してくれたので、それを鑑賞したのです。舞台は、これも北海道で、こんぶ漁師の家に嫁に行った主役(伊東美咲)が、漁師の嫁としての仕事に慣れないうちに、夫(佐藤浩一)の浮気や姑との確執などで、自分も昔の恋人との関係が戻り、あれやこれやのうちに自殺してしまうという筋だったと思いますが、全体的に暗いイメージの映画と記憶しています。
ちょうど、テレビで、「電車男」のエルメス伊東美咲が演じたいたころだったで、随分とイメージの違う伊東美咲を見てしまったと、少し、がっかりでした。女優さんは、多くの役柄を演じなければならないのでしょうが、伊東美咲には、明るい、ちょっと、とぼけた役柄が、お似合いだと思いますが、どうでしょうか?