「2011年就職戦線異状アリ」

桜

2011年3月卒業予定の学生の就職活動(「就活」)が過熱状態のようです。私の一人息子も、この4月で大学4年生となり、世の中の大学生と同じように、昨年末から、ボチボチと、「就活」が始まりました。実は、ボチボチなどと悠長な言葉では表現できないほど、まさに、「2011年就職戦線異状アリ」です。
今年になって、2月末から4月にかけて、その活動は、厳しさを増すばかり。さすがに、これまでは、パチンコ、麻雀など大学の自由な時間を謳歌していた息子の目の色が変わりました。自分の周りの友人たちの動き出しにも感化されたようです。
そこで、今時の「就活」の主な流れをご紹介しましょう。
まず、3年生の11月〜12月頃には、希望する会社へのプレエントリーが始まります。プレエントリーとは、インターネット上で、主に、毎日コミュニケーション(「マイコミ」)、リクルートナビゲーション(「リクナビ」)という就職専門サイトを通じて、要するに「履歴書」を希望する会社に提出する作業です。プレエントリーを済ますと、希望した会社から「会社案内パンフレット」が送られてきます。我が家にも、大方、段ボール箱いっぱいはあるでしょう。
次に、プレエントリーを済ませると、会社案内パンフレットなどを見て、ほんとうに自分が希望する会社にエントリーシートを提出します。このシートは、会社によって違いはありますが、志望動機、学生時代に力を入れたこと、ゼミでの研究テーマ、自分のPRポイントなどを記載するのが通常です。このシートを提出すると、第1次の書類選考が始まり、これにパスした人には、会社からセミナー(会社説明会)の案内が来ます。会社によっては、インターネット上で会社テストの受験も必要です。その先は、グループ面接、数回程度の個人面接を行うことにより、順次、選考されながら、携帯電話に次回の面接予定日の連絡が入ります。この電話がなければ、その時点で「ご縁がありません」ということです。そして、最終面接(役員面接)で合格すると、めでたく「内定通知」を頂くことになります。
以上が悠長な本来の流れですが、「異状アリ」とは、この流れに変化が起きているということです。一昨年のリーマンショックを発端とした世界同時不況の影響により、日本の雇用事情が悪化し、就職も「大氷河期」を迎えることになりました。そのため、学生の危機感は、ピークに高まり、一つの会社に、多くに学生がエントリーをするようになったため、会社側がエントリーシートでの選考をあきらめて、セミナーへの参加を、予約申し込みの早い者順にしてしまったことです。そのため、インターネット上にセミナーの開催予定が掲載されると、僅か数分で満席になります。そのため、セミナーの予約を取ること自体が、非常に難しくなっています。さらに、会社側は、これを機会に、少しでも優秀な学生を採用するために、内定時期を遅らせながら、メジャーな会社からの順送り人材の確保を狙っています。
このため、学生には、金銭的、時間的に過度な負担がかかるようになりました。当然、新学期が始まっているのも関わらず、授業を受けるどころではありません。単位取得に余裕のある学生は、「就活」に多くの時間を割くことになります。このことは、大学が最終学府としての本来の機能を失うことにつながるわけです。さらに、「就活」の三種の神器として、携帯電話、インターネット環境のパソコン、活動資金が必要です。特に、アルバイトで生活を支えている学生は、アルバイトをする余裕も失ってしまうことになり、学生の生活問題にも発展してしまっています。
私の時代は、「就職協定」というものが経済界と大学との間にあり、今日のような就職活動の過熱を押さえていたわけですが、今まさに、そういった動きが求められるのではないでしょうか?しかしながら、一人息子が、銀行、商社、メーカーなどと様々な会社のセミナーを受け、グループ面接、個別面接などで、様々な会社の社員と接触し、様々な話を聞くことにより、何だか、親の欲目かもしれませんが、ドンドン大人として成長しているように見えます。厳しい「就活」は、違った意味での効果を作りだしてもいるようです。