「シアター」

tetu-eng2014-02-09

「シアター」
「シアター2」
 有川 浩
 アスキー・メデイアワークス
 2013年9月25日発行(「シアター2」)
 552円(税別)(「シアター2」)

 寒い日が続きます。夏は暑いし、冬は寒いし。と言っても、子供の頃は、氷が張ったり、水道管に縄を巻きつけたりは、西の育ちのぼくにも、普通のことだったと思います。きっと、地球温暖化とかいうもので、温かい冬に慣れてしまって、時折、訪れた寒い冬に戸惑っているのでしょう。歳を追うごとに、寒暖の差を感じるのは、他に、興味がなくなってきたからでしょうか?もっと、いろんなことに興味をもって、アクテイブにならなくては、老け込んでしまいます。

 観劇もそうですね。いつ以来、行ってないでしょうか?帝国劇場で、「ラマンチャの男」を見て以来って、もう、30年前のことですね。いろんな意味で、余裕があるのだから、観劇も興味の選択肢の一つですね。この小説は、大劇場で公演する大劇団ではなく、小劇場で公演する小劇団の存続を懸けた青春群像です。

 劇団の名前は、「シアターフラッグ」。主宰は、春川巧。巧には、経営観念がなく、300万円の負債を抱え込みます。巧の兄である司は、300万円を肩代わりする条件として、2年以内に完済すること、そして、完済できない場合には、「シアターフラッグ」を解散すること、を提示しました。ここから、2年以内に300万円の返済を目指して、「シアターフラッグ」の劇団員10人の劇団存続に向けての活動が始まります。

『「演劇ってもんは社会的な経済活動として成立していない」
 確かに商業的に成功している劇団はスーパーメジャーのほかはごくごく一部ーーースーパーメジャーを含めても十指に満たない。劇団員やスタッフに月々の給料を支払えるレベルになると更に片手に絞り込めるだろう。』

 演劇の世界は、とにかく演劇が好きな人たちが、アルバイトで生活を凌ぎながら、好きな演劇活動を愉しんでいるということらしい。もちろん、オーデションなどを受けながら、メジャーデビューを目指している人も居るだろうが・・・。そして、なお、閉鎖的な経済社会であり、演劇関係者が、他の劇団の演劇を見に行ったり、来てもらったりが多くて、外からの流入は、多くはないそうです。

 そりゃそうでしょう。入場者200人ぐらいの小劇場で、昼・夜の2回公演を5日開演で、入場料3000円。これが、小劇団の相場。とすると、売上六百万円也。ここから、練習場所借上費、劇場借上費、舞台製作費、当日スタッフ費などを支出すると、ほとんど、打ち上げ代程度しか残りません。公演は、おおむね3回・年程度。もう、こうなってくると、趣味の世界ですね。それでも、演劇から足を洗えないのはなぜか?それは、演劇に対する情熱。

 有川浩さんの小説は、面白いですね。ライトノベルと言ってしまうと、ちょっと、失礼かもしれませんが、肩がこらずに読めるという意味です。そういった意味では、純文学愛好家の方には、劇画だねって言われるのでしょうが、ぼくは、有川浩さんの作品は好きですね。もともと、芥川賞作品よりは、直木賞作品、そして本屋大賞作品のほうが、読みやすいのだから、いいじゃないですか?ってことです。やはり、大衆文学(このことば、もう、古いかも?)ですよね。

 「シアター」は「シアター2」のあと「シアター3」が予定されているようです。まだ、借金が返済できていない「シアターフラッグ」の行方はどうなるのでしょうか?ああ、早く、「シアター3」が読みたい、って、これが、小説でしょう。