「契約」

tetu-eng2014-04-13

「契約」
 明野 照葉
 光文社文庫
 2010年7月20日発行
 619円(税別)

 STAP細胞は、ほんとうに存在するのか?理化学研究所VS小保方さん。両者とも、論文の不具合については、一致。理化学研究所は、核心部分である「STAP細胞の存在」については、言及せず。小保方さんは、「200回以上も生成」とのこと。

 それにしても、小保方さんの会見はすごかったですね。ナニがすごいって、30歳の女性が、理化学研究所を相手に、堂々たる会見。並の人にはできません。余程の自信か?後顧に憂いがないか?うむ、それとスポンサーがいないと、会見場所のホテルの借り上げ、有名弁護士への委任など、一研究員にはできないことですよね。そのスポンサーは、誰か?

 下手なサスペンス小説よりは、面白くなってきました。ぼくの推理では、アメリカの某研究所。すでに、時期を見て、小保方さんは、そこに移籍するのではないでしょうか?って、野次馬の邪推ですが・・・。日本の科学者の世界がどうなっているのか?ほくは、知りませんが、あまりにも脇があますぎるでしょう。R研究所は、今更、論文が不出来だったなんて、よく言えますよね。そんなことよりも、「STAP細胞は、ほうとうに存在するのか?」。この一点勝負でしょう。

 前置きが長くなりましたが、ここまで引っ張ったのには理由があります。初めて、読みました明野さんの小説。うん、サスペンス小説になるのでしょうか?残念ながら、「STAP細胞は、ほんとうに存在するのか?」のほうが、断然、面白いでしょ。

 あらすじは、牧丘南欧子(なおこ)34歳、現在、小さな出版社に勤務。小学校、中学校では、勉強ができ、スポーツも万能、ナニをやってもクラスのスター的な存在でした。高校も、名門女子校、でも、そのころから、子供時代の輝きを失い始めて、大学、就職と、かっての「南欧」の存在感はなくなってしまいました。そんな今の自分を認められない南欧子。

 そこに、突然のヘッドハンテイング。輝いていたころの「南欧」を思い出させるような話が舞い込んできました。そして、雇用契約に署名捺印。しかし、この雇用契約には、とんでもない裏がありました。ここからが、どうもストーリーに稚拙さがあるのです。子供時代に同じクラスにいた(いたことさえ思いだせない)水戸桃子。子供時代、桃子は、いじめに遭っていた。その桃子が、サクセスストリーの後、子供時代のスターだった南欧子に復讐を仕掛けるというお話です。

『人間は、自分を正しく認識できるようになってこそ、他人も正しく認識できる。大切なのは、まず、自分を認識する力を身につけることだ。自分を知ってこそ、正しい人生が歩めるし、自分なりのしあわせも掴める。
 長い間、私は自分に対して謝った評価を下し続けてきた。子供の頃の体験と記憶が、私の自己認識を狂わせて、不当に低い評価を下させたのだ。そして、私に自己認識を誤らせた人間たちもまた、自分たちを正しく認識していなかった。私はそのことにも気がついた。彼らは、自分たちが人を蔑む立場にないことを知らず、高みに立っていると思い上がった錯覚をして、傷つけるべき相手でない人間を傷つけた。自分たちのポジションは不動だと、彼らは思っていたかもしれない。だが、違う。人生はいたって流動的なものだ。時としてがらりと様相を一変させたりもする。』

 桃子が南欧子に復讐を仕掛ける下りの心理描写ですが、登場人物のこの種の心理描写が随所にでてきて、少し、嫌悪感を覚えるほど身勝手な考え方が多いですね。って、読者に思わせることが、小説家の真骨頂ですか?とすると、ぼくは、まんまと明野さんの罠にはまったことになります。

 とはいえ、やはり、「STAP細胞は、ほんとうに存在するのか?」のほうが、興味津々。「事実は小説よりも奇なり」です。