「もういちど生まれる」

tetu-eng2014-05-25

「もういちど生まれる」
朝井 リョウ
幻冬舎文庫
2014年4月10日発行
540円(税別)

 春のテレビドラマは、警察モノが多く放映されています。古くは、「七人の刑事」、「西部警察」など有名な番組があります。小説も、警察小説は、根強い人気があるようです。横山秀夫今野敏佐々木譲黒川博行などなど人気作家がたくさんいます。なぜ、警察モノは、人気があるのでしょうか?

 昔の子供は、将来なりたい職業は?と、問われれば、「おまわりさん」。でも、今の子供は、どうなんでしょうか?「弱きを助け、強きを挫く」とか「勧善懲悪」とか、うん、水戸黄門大岡越前と同じ感覚かな。権力が好きなのかも。とにかく、「おまわりさん」が好きなのです。

 ぼくは、恋愛モノ、たとえば、「続・最後から二番目の恋」、中井貴一小泉今日子のデユエット曲「T字路」は、6月4日CD発売。すでに、アマゾンに予約済みで〜す。家族モノ、たとえば、「なるようになるさ」(館ひろし浅野温子)。そして、青春モノ、「弱くても勝てます」(二宮和也薬師丸ひろ子)。が、好きですね。特に、特に・・・「続・最後から二番目の恋」はいいですね。「続」で終わらず、「続・続」・・・・とお願いしたいですね。これは、「大人の青春ドラマ」とのこと。

 えっ、結局は。小泉今日子薬師丸ひろ子のfanってこと。

 ということで、この小説、爽快??青春小説です。が、爽快かどうか??朝井リョウさんは、サラリーマンとの兼業作家のため、作品は少ないですが、平成生まれと若いので、青春小説がお得意ですね。青春って、いつからいつまでですか?常識的には、十七・八歳から二十七・八歳ぐらいまでですかね。六十歳、でも、まだ青春ってないですかね。

 この小説の主人公は、二十歳前後の青年(もちろん男女)。短編で連作ですが、それぞれの編での主人公が入れ替わり、周辺の登場人物がゆるやかな繋がりをもっています。青春小説なのですが、恋の悩みよりも、主人公の才能についての悩みが、この小説の主題となっています。青年の未来に向けての漠然とした夢であったり、不安であったり、こりゃ、青年の特権ですかね。

 大人になると、特に、還暦も過ぎてしまったぼくは、青年の時に何を考え、どういう行動をとったか。もう、忘れてしまいました。かりに、僅かに記憶の底にあったとしても、青年の時の感じ方とは、まったく、別物になっているのです。青年の時の感受したことは、大人には、もう、ないのです。

 たぶん、こうなんだろうと思っても、それは、今の僕のおもいであり、青年のときのお思いではないでしょう。だから、六十歳、まだ、青春は、もう、ないのです。

『もうすぐ二十歳なんだからさ、と思いながら、オレは携帯のロックを外す。どうせ普通の企業に就職しなきゃいけなくなるんだよ。結局は、自分が休んでも、誰かが代わりを務められるような仕事に就くことになる。そこで四十年近く働くんだ、たまに有休うまく使いながら。多分昼は五百円弁当で。
 オレだってそうだよ。プライドなんて、持たないでいたらこんなにも楽なんだ。
 それでも、どうしてだろう。そんなことを思うたびに、辛いものでも食べたように、舌がぴっりと痛む。』

 ぼくも、二十歳の頃、同じようなことを考えた軌跡があります。ぼくは、学生時代から日記を書いていたので、いろいろと青臭いことを書き連ねていました。いま、読み返すと、ふっ、ふっ。でも、その青臭さが、まさに、青春なんでしょう。