「レインツリーの国 World of delight」

tetu-eng2015-12-20

レインツリーの国 World of delight」
有川 浩
新潮文庫
平成23年11月15日十五刷

何年か前から、本棚に積まれていました。読もう、読もう、と思っていましたが、なぜか、後回しになっていました。

もっと、早く、読めばよかった。

年末に、今年、最良の小説を読んだというのが率直な感想です。

大学を卒業して、関西から上京し入社3年目、向坂伸行は、ボーナスで買ったパソコンであるブログと出会いました。

『ブログのタイトルは「レインツリーの国」。プロフィールの名前は「ひとみ」で、公開してあるプロフィールは「都内在住 2x歳、女性」だけだ。
もしかすると公開していないかなと思ったメールアドレスは、メニューの最後のほうに小さく表示されていた。』

「ひとみ」さんとの運命的な出会いです。

伸行と「ひとみ」さんとの、メールのやりとりは、盛り上がりながら始まりましたが、当然の流れで、伸行は、「ひとみ」さんと逢いたくなります。

『直接会うのがだめやったら、せめて電話だけでもどうかな』

そして、ここから、伸行と「ひとみ」さんとの交際が始まりました。しかし、「ひとみ」さんは、聴覚障害者でした。健常者と聴覚障害者の交際は、なかなか、コミュニケーションがとりにくい。伸行は、必要以上に「ひとみ」さんを気遣い、そして、気疲れ状態になり、「ひとみ」さんは、周りとのトラブルに必要以上にナイーブになります。

聴覚障害は二重の障害でもある。
まず音から隔絶され、そのことによって次は健聴者とのコミュニケーションが阻害される。聴覚障害で最大の問題は、人間としてのコミュニケーションから隔絶された状態に置かれることになるのを世間になかなか認知されないことだ。この困難の根の深さを想像だけで把握できる人間はまずいない。』

眼の悪い人は白い杖で世間は、認知できるが、耳の悪い人は、補聴器の有無で認知することになるのか?でも、女性は、髪で補聴器が隠れます。そもそも、完全に音を亡くした方は、補聴器はつけていないでしょう。とすると、耳の悪い人は、黄色い杖を使用したらどうだろうか?

勉強不足で、申し訳ないが、何らかのマークのシステムがあるのかもしれません。

この小説は、恋愛小説ですが、ぼくは、聴覚の障害について、すこし勉強することができました。そして、自分が健常であることに、おおいなる感謝をしました。ときどき、耳が詰まったり、胸がばくばくなったり、歯が痛くなったり、そんなことでオロオロしている自分が、ちっぽけな存在に思えます。

伸行と「ひとみ」さんにエールを送ります。

『レインツリーはアメリネムノキの別名で、ひとみ的にはレインツリー=ネムノキ。そして、ネムノキの花言葉は「歓喜」、「胸のときめき」。』