「ニムロッド」

「ニムロッド」
上田 岳弘
文藝春秋3月号掲載

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「ニムロッド」の意味・・・旧約聖書の登場人物、詳細に説明すると長くなるので省略。もうひとつ、イギリス空軍の対潜哨戒機の名前。

『駄目な飛行機コレクション NO.8
BAE ニムロッド AEW.3
1976年に始まったイギリス空軍のニムロッドを早期警戒機(AEW)にするプロジェクト。機首と尾部に大型レーダーを搭載し、周囲の警戒を行う仕組みであったが、開発費用の面よりアメリカ製ボーイングE―3早期警戒管制機の導入が決定され、AEW.3は失敗作となった。』

 

と、途中で余談ですが、

今週、会社のレクレーションの流れで、友人のTさんのバイオリン独奏会を企画・開催。Tさん、4歳からバイオリンを習っていたとのこと。鼻をたらして、袖にこすりつけていた、ぼくたちの世代で、バイオリンを習っていたって、「どんだけ~」。でも、結婚して30年間のブランクがあり、退職を機会に、また、個人レッスンを始めたとのこと。

どんなパフォーマンスなのか・・・内心、興味津々でしたが・・・映画音楽をメインとして12~3曲を暗譜で弾ききったのには、「ビックリ!」でした。さすがに、独奏会を引き受けただけはあります。「芸は身をたすける」といいますが、なにか、ひとつ、こういった特技があると第二の人生が豊かになるような気がします。

ぼくも、極めて庶民的なウクレレを趣味にしていますが、暗譜ができないのですね。Tさんに尋ねてみたら、「集中的に100回は弾かないと、暗譜はできなよ!」とのこと。やはり、そうなのだ。音楽・楽器も、才能は必要かもしれませんが、努力することが一番、必要なことなのだと・・・この歳になって、あらためて認識しました。

そこで、最近、ウクレレのソロ弾きの動画を、フェイスブックにアップすることにチャレンジしています。2~3週間ぐらいで1曲を仕上げてアップしたいな、と思っています。このチャレンジにより、動画でソロ弾きの音をチェックできること、1曲を弾ききって仕上げること、などで技量をアップできるのではないかと期待しています。興味があれば、フェイスブックで、ぼくの拙いウクレレ演奏を聴いてみて下さい。

と、余談はこのぐらいにして、「ニムロッド」です。
今年の第160回芥川賞の受賞作品です。今回は2作品が選ばれています。
この小説の登場人物はシンプル。主人公は、SEの中本哲史。彼の同僚のニムロッドこと、荷室。そして、彼の彼女のキャリアウーマンの田久保。の3人がメインキャスト。
あらすじは、ビットコインの採掘を任された中本・・・仮想通貨の仕組みが縷々説明されているが、さっぱり理解できない・・・その同僚から、「駄目な飛行機」のメールが度々送られてきます。その実態は、荷室は小説家志望。そこに、仕事に疲れた田久保が、中本に癒しを求めます。


『高い塔みたいに価値を積み上げる僕の新しい通貨。いつか雲を突き抜けてその塔が高くそびえたならば、その最小単位が顔を出す。nimrod‘塔の上に最後に残った人間、人間の王。
 僕は上空を向いたまま自分の思い付きにしばしとらわれる。それからふと我に返ると、飛行機の影はすっかりなくなっていた。』

「駄目な飛行機」「仮想通貨の採掘」など、駄目な人間だから、塔のてっぺんから太陽を目指す。「努力」という言葉を使わずに、積み上げていく「何か?」を追い求めているのではないか?そんな「クサイ」メッセージかな?いやちがう!アイロニーなのだ。すべてが虚無ということ。