「熱源」

「熱源」

川越宗一

文春文庫

2022年7月10日第一刷 

 

「柿 10個」 和尚の法務で、3週間ぶりの坐禅会。帰り際に、和尚から参道のたわわに実っている柿狩りのお許し。早速、剪定ばさみを借りて、チョッキン、チョッキン、10個も収穫しました。

「柿食えば 鐘が鳴るなり 太山寺

 

 

河野大臣「保険証、運転免許証を廃止して、マイナンバーカードに統合」とのこと。

ところが、国家公安委員長、運転免許証を廃止するつもりはないとのこと。

 

マスコミの紹介する国民の声は、マイナンバーカードは、信用できないとのこと。「個人情報が漏れないの?紛失したらどうするの?リスク分散すべきでは?」

 

一体、どうなっているの?河野大臣のフライングか?また、岸田内閣支持率が下がって、20%台の危険水域とのこと。

 

どうも、わが国民は、政府に対する信用が低いようです。これは、政府の責任か?国民の我が儘か?その両方か?若しくは、他の理由か?

 

結論からすれば、優等生的には、それらすべての複合的な問題であ~る。じゃあ、どうすればいいのか?強権的に決定するか?議論を尽くして民主的に決定するか?日本は、後者でしょう。

 

なお、日経新聞は、日曜日の社説で、政府方針について「妥当である。」との明快な結論でした。

 

何だか、外野席から訳の分からないことをつぶやきましたが、「熱源」を読むと、今は、なんとも平和な世界だと痛感します。

 

「熱源」は、文句なく、今年の、ナンバーワンの小説。

 

舞台は、樺太(サハリン)。そもそも、樺太は、誰のものでもなかった。そこには、アイヌなどの先住民族が平和に自然と共存しながら暮らして居ました。その後、日露両国人が入植。さらに、明治維新のあと、樺太・千島列島交換条約によりロシア領となりました。

 

物語は、その時代から始まります。樺太アイヌは、樺太に残る者、北海道に移住する者に分かれます。その後、日露戦争により、樺太の南半分は、日本領となりました。そのとき、北海道に移住した樺太アイヌは、樺太に戻ります。

 

そして、悲劇は、昭和20年8月、日本の敗戦により、ロシア軍が国境を越えて樺太を占領。さて、樺太アイヌの運命は?

 

『「弱肉強食の摂理な中で、我らは戦った。あなたたちはどうする」

「その摂理と戦います」

「弱きは食われる。競争のみが生存の手段である。そのような摂理こそが人を滅ぼすのです。だから私は人として、摂理と戦います。人の世界の摂理であれば、人が変えられる。人知を超えた先の摂理なら、文明が我らの手をそこまで伸ばしてくれるでしょう。私は、人には終わりも滅びもないと考えます。だが終わらさねばならぬことがある」』

 

日本人は、西洋文明に同化して、西洋文明と戦った。アイヌは、ロシア、日本からの同化政策により、そのアイデンティティが失われようとしている。そこには、弱肉強食の摂理があるが・・・。

 

他民族、他文明、他者の思想など常に他者に対するリスペクトが、最も、貴重なことであるということ。・・・いろいろ、考えさせられる小説でした。