「首里の馬」
高山 羽根子
文藝春秋9月特別号
相棒(ダックスフンド オス 17歳6月)、誤嚥性肺炎になって、瀕死の状態であることは、このブログでも紹介しました。もう、旅立ったと思っている方もいるかもしれませんが、どっこい、彼は、頑張っています。
7月の連休から、まったくエサを食べなくなり、お医者さんに連れて行くと誤嚥性肺炎とのこと。血液検査の結果、肝臓、すい臓、そして心臓が肥大化している。酸素カプセルで療養して、その後、自宅で安静療養中。
2週間前ぐらいから、誤嚥性肺炎は治ったみたいですが、エサを食べない状況に変化なし。そこで、高カロリーの回復期のエサを購入して、口腔内の上あごに指でエサを塗り付けて、強制的にエサを食べさせることにしました。
ほとんど寝たきり状態でしたが、徐々に力がついてきたのか、やや、安定してきたようです。ただし、自らエサを食べようとはしないので、口を開けて、スプーンでエサを投与する格闘を継続中です。
現在、目は見えず、耳も聞こえず、後ろ足が不自由になって、ほとんど歩けないですが、それでも、朝夕は、自主リハビリでベランダをフラフラしています。エサは、朝夕、食べさせていますし、プリンなど甘いものには反応しています。昼間は、静かに寝ています。
これ以上、回復はしないかもしれませんが、いまは、相棒の介護で、ぼくも、細君も、一所懸命です。彼にとっては、いい迷惑なのかもしれません。結局は、人間の自己満足なのでしょうか?
沖縄では、戦前、競馬が盛んだったそうです。もちろん、サラブレッドではなく「宮古馬」という沖縄在来の小さな馬が走っていたようです。
未名子は、首里の港川と呼ばれる場所の「沖縄及島嶼資料館」という私設の資料保存館で資料整理をしている。
それとは別に、妙な仕事もしていた。この仕事が面白い。作家という人は、なぜ、こんな仕事を思いつくのか?
『遠くにいる知らない人たちに向けて、それぞれ一対一のクイズを出題する。仕事の正式名称は『孤独な業務従事者への定期的な通信による精神的ケアと知性の共有』。略称は問読者(といよみ)、というらしい。依頼人は個人というよりは、その所属する集団で、クイズの正解数や内容により、通信相手の精神や知性の安定を確認する目的でこのサービスを利用するのだという。』
未名子は、この妙な仕事で、ヴェンダ、ポーラ、ギバノ等とリモートで交信しながら、雑談のなかで、馬の飼い方などの相談をする。何故か?
ある台風の日、未名子の家の庭に、馬が一頭、迷い込んできました。その馬が、「宮古馬」だったのです。彼女は、その馬を警察に届けますが、また、また、なぜか?ある日の早朝、動物公園に引き取られた、その馬を連れ出し、彼女は、馬の飼育を始めます。
馬は、「ヒコーキ」と名付けました。
『今まで自分の人生のうち結構な時間をかけて記録した情報、つまり自分の宝物が、ずっと役に立たずに、世界の果てのいくつかの場所でじっとしたまま、古びて劣化し、消え去ってしまうことのほうが、きっとずっとすばらしいことに決まっている。と暖かいヒコーキの上で揺られながらかすかに笑った。』
沖縄の人たちは、過去に、絶望さえ吹き飛んでしまう地獄の景色をみた。その土地を舞台にして、資料館の資料、新手のカウンセリング、そして、「宮古馬」というモチーフで、作者は、何が言いたかったのか?芥川賞受賞作品は、毎度、難しい。