「草を褥に 牧野富太郎」
大原富枝
2022年11月20日初版
植物画
ボタニカルアート入門。何年たっても、上達しない水彩画。ボタニカルアートは、植物を細かく観察して、根気よく、正確に、描くことが基本らしいですが、ぼくは、ダメ。ついつい、サッサと描いて、はい、終わりになってしまいます。
お習字の話。最近、磨った墨の色が薄く感じていました。どうも、固形墨が悪いのか、固形墨の磨り方が悪いのか、50年前の硯が悪いのか、少し、悩んでいたところです。
そこで、今更ながら、硯と固形墨の磨り方について勉強しました。
まず、硯ですが、硯は、その表面に鋒鋩(ほうぼう)という微細な凹凸があるそうです。その凹凸で墨がおろされるらしいです。そして、その鋒鋩は、そう簡単には、摩耗しないらしいです。
ただし、長年使っていると、墨の膠が付着して、凹凸が小さくなるので、丁寧に洗う必要があるとのこと。そういえば、50年間、洗った記憶がない。こりゃ駄目だ。
墨の磨り方ですが、硯の陸の部分に50円硬貨大に水を垂らして、3分磨って、海の部分に流す。これを繰り返すとのこと。海の部分に、一度に水を入れて、その水を陸の部分で磨るやり方は、駄目。あっ、それと、固形墨は、斜めにして円を描くように磨ると効率がイイらしいです。
と、二つのことが解って、さっそく実行。なんと、いい色の墨が磨れたではありませんか。
何事も、道具を上手に使うことが肝要です。また、ひとつ学びました。が、これで、字が上達したわけではなく、基本の「き」を学び直しただけでした。
さて、読書雑感です。「舞い上がれ」の次のNHK朝ドラ「らんまん」の主人公のモデルとなった牧野富太郎氏の波瀾万丈の人生を描いた小説です。
牧野富太郎って、誰?
1862年(文久2年)高知県生まれ、1957年(昭和32年)94歳で逝去。日本の「植物学の父」と言われた偉大な人物。その人は、どんな人だったのか?
という興味で、ジュンク堂で見つけた本が「草を褥(しとね)に」です。
牧野富太郎は、小学校を中退、もちろん、中学校、高等学校、大学という学歴もなし。植物学の基礎学習なしに、ほとんど独学で植物学の研究者としての生涯を送った。
しかし、牧野の生家は、裕福な造り酒屋であり、学資に困るような家庭環境ではなく、一人息子でしたが、比較的、寛容な家庭環境だったようです。
では、なぜ、普通の研究者の道を進まなかったのか?これが、この小説の主題です。
縁あって東京大学の助手になり、大学の植物学の資料は、自由に扱うことが出来たようです。そして、晩年には、研究成果が認められ理学博士となりますが、遅すぎる博士でした。
『富太郎は植物の実写を良くする生まれつきの才能を授けられていた。青年の日に、彼が写した植物の絵は、百年近い歳月を経た今も、見る人の心に、まざまざとその生ける姿を再現して見せる。眺めているうちに花のいのちが活き活きと蘇ってきて、眺めている人の心に泉のように溢れてくるものがある。』
是非、図書館で牧野富太郎植物図鑑を借りて、富太郎の写生を鑑賞しては如何でしょうか。