風姿恋伝

風姿恋伝

■風姿恋伝
「風姿恋伝」唯川恵著。唯川恵、「肩ごしの恋人」で直木賞受賞。大人の女性の恋を描いて、今、女性に対して小説やエッセイの人気作家の1人です。エッセイのタイトルを見て、「風姿花伝」を思い出し、読んでみました。
風姿花伝」は、世阿弥が著した能の芸道書です。能の芸道書を超えて、芸術論、人生論までを著していると言われています。まだ、私は読んだことはありませんが、一度、読んでみたいと思っていました。もちろん、古典ですからそのままで読むべきだと思いますが、シエークスピアを日本語訳で読むのと同じで、古典は外国語みたいなものなので現代語訳になっていないと読み下すことは難しいと思います。源氏物語も、そういえば、古典そのもので読んだことはなく、現代語訳で読みました。
話はそれましたが、タイトルが「風姿花伝」をもじったものであり、簡単に言えばパックたものであり、「花」を「恋」に変えたものです。そこに、興味を持ちました。唯川恵は、「風姿花伝」を読んだことがあるのでしょうか?
エッセイの内容は、30代前後の女性の「恋」を題材としたものであり、本当に、書いてあるようなことをイチイチ考えながら、「恋」をしているとしたら、何と、女とは面倒くさい動物だと思わざるを得ません。でも、これは、書き物の世界のことであり、現実の30代前後の女性が働きながら、働くこと、恋に関すること、結婚について、結婚してからの人生について、常に、複雑に考えているとしたら、それはそれで、大変なことだし、男としては、驚かざるを得ません。
男なんて、毎日を、ただ、平平凡凡と流されるように生きているにすぎないし、刹那的な動物だし、特に「恋」なんてことを、そんなに難しくなんて考えてみたこともないし、そんな余裕もなかったと思います。もちろん、「恋」なんて細君と結婚する前、約2年の交際期間以後、27年経験もないので、今更、感覚として解らないと言うのが本当でしょうか。
それが証拠に男向けの「恋」の手ほどき本なんて見たこともないでしょう。そんな本があると気持ち悪いと思いませんか。第一、売れないでしょう。いや、ひょっとすると、昔堅気の堅物な男がそう思っているだけで、ひょっとするとベストセラーになるかもしれません。
女性は、現実主義者だとか言われることもありますが、やはり、ロマンチストというか夢想主義者というか「恋」の手ほどき本を読んで、自らをその世界に浸して、現実から離れることにより、ストレスを解消しているのかもしれません。
まあ、いずれにしても、中年男の私には理解できない世界でした。時には、こういった本を読むのも違う世界をのぞいた気分になってよいかも、とも思いましたが、正直に言えばつまない本を読了したなとも思っています。