■買収されるのも悪くない。
タイトルから勘違いしないでください。サブタイトルは、「三角合併解禁の本当の意味」です。北村慶著「買収されるのも悪くない−三角合併解禁の本当の意味−」。10月の初めに経済紙を賑わした初の三角合併の記事に触発されて、三角合併とは何かということが知りたくて、久しぶりに経済本を読みました。
米金融最大手のシティグループは2日、約68%の株式を保有する日興コーディアルグループの残りの株式を、来年1月に「三角合併」の手法を使ってすべて取得し、完全子会社にすると発表した。外国企業の投資を呼び込むため、今年5月に解禁された三角合併方式を活用し、外国企業の株式を買収の対価に使う第1号になる。世界最大級の金融グループであるシティが活用を決めたことで、三角合併を使った外資の日本企業買収が続く可能性がある。
本書は、6章に分かれて構成されていますが、最初に三角合併についての記述、M&Aの本質と各種形態に関する記述、M&Aで株式投資・資金供与・サービス提供などいろんな役割を演じる人たちに関する記述、最近のM&Aのケース・スタデイなどの記述について解りやすく図表や仮定計算なども使って、M&Aの経済活動を説明しています。ただし、頻繁に、本書の試算は、過去の事例に基づく例示であって、今後の株価の動向を予想するものではない。さらには、今後、類似の案件が起こったとしても、同様の投資効果を生むとは限らない。などのエクスキューズが記述されています。村上ファンドの事案、阪急・阪神のM&Aなど最近の事案を例示として扱っているので、興味深く読むことができます。
さて、本題の三角合併について、少し、説明します。
まず、M&Aとは、企業の合併(Merger)や買収(Acquisition)を表す言葉です。これまで、日本の法制度では、外国企業が日本企業を買収しようとする時は、基本的にはキャシュ・デイール(現金による買収)以外には方法はありませんでした。そのため、日本企業の株価が世界水準と比較して安価であると言っても、大企業を買収しようとすれば数千億円のキャッシュが必要でした。つまり、日本企業は、法律によって外国企業からの買収に守られていたわけです。そのため、特に、アメリカ政府からは強く市場開放を求められており、ナショナル・スタンダードの法制を要請されていました。その結果、平成18年4月の新会社法の制定により「株式交換による三角合併」を可能となりました。
それでは、「株式交換による三角合併」の意味ですが、買収者である外国企業は、買収対象の日本企業の株主に、自社株式を対価として交付する「株式交換」という手法を採ることで、現金を必要とせずに、日本企業を傘下に収めることができるということです。
この三角合併の最初の事案が、最初の記載した米国シテイグループによる日興コーディアルグループの買収ということです。
今後、日本企業は、外国企業からの買収圧力に対して、どのような手段で対抗していくのか。それが、企業の大きな課題となっています。
今日は、ちょっと、お固いお話でした。