「花咲小路四丁目の聖人」

tetu-eng2012-10-06

「花咲小路四丁目の聖人」
小路 幸也(しょうじ ゆきや)
ポプラ社
2011年11月15日第1刷発行
1600円(税別)(神戸市立西図書館)

『<Last Gentleman Thief “SAINT”>
 イギリスに住んでいる五十歳以上の方だったら、たぶんその呼び名に反応する。ああ、って言って少し笑って「覚えているよ」って話しだす。「ありゃあ大した泥棒だったよねえ」って。詳しい人なら「傷つけず、脅かさず、捕まらずってね。泥棒とはいえ大した奴だったよね」と言ってうんうんと頷く。
 そう。日本語に訳せば<最後の泥棒紳士“セイント”>』

 そう、それが私のお父さん、矢車聖人七十歳。イギリス人のハーフだったお母さんと結婚して日本に帰化して四十年。私は、矢車亜弥。二十五歳。母は、亡くなって、お父さんと二人暮らし。花咲小路商店街の近くのマンションで、<矢車英数塾>を経営しながら生活をしています。花咲商店街は、ご多分に漏れず空き店舗が多くなって、寂れる一方です。そんな花咲商店街にも、時には、事件が起こります。その時、商店街の皆が頼りにするのは、そう、矢車聖人なのです。

 私の幼友達の克己くんの「白銀皮革店」が、暴力団から大金を騙し取られた時もそうでした。いつの間にか、そのお金が戻ってきたのです。これは、もちろん、私のお父さんの仕業です。でも、お父さん一人で、できるものではなく、どうも、克己くんともう一人の私の幼友達の「松宮電子堂」の北斗くんが片棒を担いでいるようです。その時、お父さんは、私に、こう言いました。

『「覚えておくといい。<Last Gentleman Thief “SAINT”>は、盗みに失敗したことはただの一度もない。勝ち目のない戦いは一度もしたことはないし、そもそも、“SAINT”に勝ち目のない戦いは存在しない。常に完璧に盗みを遂行するのだ。それは未来永劫、私が死ぬまで続く栄光の歴史なのだよ」』

 ある時、この花咲商店街に最大の危機がやってきました。香港の大手スーパーチェーンの「マッシュグループ」が、都心に近い、この商店街の再開発に食指を伸ばしてきたのです。しかし、表向きとは別に、この動きには、大きな裏が潜んでいるようです。その原因は、<Last Gentleman Thief “SAINT”>の過去と関係があるようなのです。この危機に挑むお父さん、克己、北斗そして・・・・。お父さん、大丈夫ですか。

 ライトミステリー小説のジャンルの作品だと思います。最近、このジャンルの小説は人気があり、私も、結構、好きですね。このジャンルの小説の特徴は、文章自体が、読みやすく、軽い。そして、ミステリー自体が、あまり手が込んでいない。ちょっぴり、純愛あり。要するに、漫画を小説にしたイメージです。この作者の作品で「東京バンドワゴン」シリーズがありますが、それも、読んでみたいと思わせる「花咲小路四丁目の聖人」でした。