「ストーリー・セーラー」

tetu-eng2016-02-28

「ストーリー・セーラー」
有川 浩
幻冬舎文庫
平成27年12月5日初版

何だか、寒い日がつづきます。と言っても、まだ、2月ですから。今年の冬は、日々に寒暖の差があって、ヒートテックをはいたり、脱いだり、で、結局、脱いだまま2月末の寒さで、膝から下が寒い寒い。じゃ、はけばいいのにと思いますが、何となく、一度脱ぐとね。

そんな季節も3月になると、温かくなるらしいですが、ぼくの天敵の花粉の飛散がおおくなり、それはそれで、鬱陶しいことになります。もうそろそろ、アレルギーも年とともに枯れていい頃だと思いますが、どうなんかな?

『「仕事を辞めるか、このまま死に至るか。二つに一つです」
医師は淡々と宣告した。
宣告を受けているのは彼一人で、彼の妻に関する宣告だった。
「あなたの奥さんは大変に珍しい、かつて症例がない病に罹っています。我々はそういう結論に達しました」
「思考に脳を使えば使うほど、奥さんの脳は劣化します」
「健忘症や認知症になる、ということではありません」
「奥さんは最後の最後まで明晰な思考力を維持するでしょう。死に至るその瞬間まで」』

彼の奥さんの病名は、「致死性脳劣化症候群」、世界でたった一人の病人。小説家というものは、奇想天外なとんでもない病気をクリエイトするものです。この手を使うと、ぼくなんぞは、さしづめ「不特定身体不具合症候群」ですね。いつも、身体のどこかに不具合を感じているが、死に至るような病気ではない、それどころか、そもそも、病気ではない。

余談ですが、最近、カウンセリングで教わったことですが、脳というのは、「感覚(五感)」と「思考」のキャッチボールをしているらしいです。「思考」の時間が長いと交感神経の働きが大きくなり、「感覚(五感)」の時間が長いと副交感神経の働きが大きくなるらしいです。そのため、リラックスしていると感じるためには、脳の「思考」モードから「感覚(五感)」モードへの意識的な切り替えが必要らしいです。

話は戻るが、奥さんの職業は、小説家です。小説家が、思考を停止するということは、書くことを止めるということです。しかし、小説家というクリエーターは、書くことを止めることができるのか?そんな妻を夫は、どう支えるのか?有川浩の真骨頂の夫婦愛をテーマにした恋愛ストーリー・・・かな?それだけでは、終わらないのが有川浩ですよ。

『「作家を辞めるかどうかじゃなかった。・・・・あたしが、書くのを辞められるかどうかだった」
そうだよ。その通りだ。
「それで、あたしが一番読んでほしいのは、いつでも必ずあなたなの」
それは彼にとってとても誇らしく、同時に痛い。
「作家を辞めたって、一番読ませたい人と暮らしているのに、書くことを辞めるなんてできない」
分かってたよ。
そう答えると、彼女は彼にすがりついて号泣した。
それは、彼女が緩やかにいつ降りてくるか分からない死を受け入れた瞬間だった。
「言っただろ?最後までそばにいるから」』