「カケラ」

「カケラ」

湊かなえ

2023年1月25日第1刷

集英社文庫

 

フリージア

朝ドラ「らんまん」がスタートしました。モデルは、植物学者の牧野富太郎さんです。土佐出身。坂本龍馬が特別出演。史実上、牧野さんが、竜馬に出合ったかどうかは明らかではありませんが。

 

先週の日曜日のこと

 

「 某 桜まつり」に和太鼓の演奏で出演しました。昨年の6月ぐらいから和太鼓の会に誘われて、月に2回の練習で、何とか、リズムを覚えての付け焼刃です。

 

それでも、満開の桜、たくさんのお客さんの前で、「太鼓ばやし」を叩き終えました。途中、テンポがズレた個所もありましたが、リカバリーして、最後の締めは、全体に合せることが出来て、まあまあの出来栄えでしょか。自己評価ですが。

 

しかし、舞台の上でのパフォーマンスなんて、中学校の文化祭以来でしょうか?そのとき、「嵐の兄弟」という劇で、なんと、主役に起用されたことがありました。タイトルまで覚えているので、強烈な体験だったのでしょう。

 

今回もそうですが、観客席の記憶は、まったくありません。いったい、目線はどこに行っていたのでしょうか。ひたすら、目線は正面を、と指導されていたのですが、太鼓を叩くことに専念して、結局、太鼓を見て、目線が下がっていたということでしょうか?あとで、ビデオを見てみると、周囲を見ているのですが・・・不思議な感覚です。

 

古希を前にして、また、新たな経験をしました。またの機会があるかどうか?そのときは、冷静に観客席を見ることが出来るかも?

 

と、余談はここまでです。今週は、湊かなえさんの「カケラ」。

 

この小説は、変わった小説作法です。主人公の整形外科医の橘久乃が、全編、「聞き役」で構成されています。

 

整形外科医の橘は、ある肥満の少女の脂肪吸引治療を施術したらしい。らしい・・・というのは、この事実は、この小説を読み終わる少し前に、気がついた。

 

ところが、その少女は、自殺をしたらしい。この事実は、この小説の中盤で気がついた。

 

この二つの事実を前提として、整形外科医の橘のヒアリングが始まります。小説の前半は、誰が誰に何の目的でヒアリングしているのか?要領はつかめません。

 

読み進むにしたがって、徐々に、整形外科医の橘が、何をしようとしているのかが、朧気乍ら見え始めてきます。

 

『カケラとカケラがはまって、家族ができ、町ができる。そして、一枚の絵の一片となる。だけど、皆がうまくはまれるとは限らない。学校という名の絵、会社という名の絵、なぜだか、自分だけ浮いてしまっている。この絵の中に自分の居場所はないのかもしれない。とはいえ、簡単に次の絵を探すことはできない。

無理に押し込むと、周囲のバランスも崩れてしまう。

少し形を変えれば、うまくはまるのに。』

 

しかし、最後の最後まで、少女の自殺した原因は、明らかにはなっていません。

 

ミステリーですが、自ら生きるのを止めてしまう人間の心理、それを周囲の人たちの関わり中からあぶり出そうとした小説ではないでしょうか?ある意味では、社会派小説。