「心淋し川(うらさびしがわ)」

「心淋し川(うらさびしがわ)」

西條奈加

集英社文庫

2023年9月25日第1刷

 

 

クスノキ

中央公園のクスノキ。木の幹には、生命力を感じます。ゴツゴツして、表面は、ひび割れたようでも、空に向かって伸びる樹木の土台です。

佐藤忠良さんは、彫刻家として有名ですが、何冊か絵本の絵を描いています。「おおきなかぶ」は代表作です。そして、「木」という絵本があります。この絵本では、木の幹がモチーフになっています。

 

 

今週は、話題の会見が二つありました。

 

一つ目は、岸田総理の内閣人事に関する会見。二つ目は、大谷選手のドジャーズ移籍の会見。クッキリと明暗を分けるような会見でした。

 

一つ目は、自民党の派閥と政治家個人の政治団体との間の不明瞭な政治資金の授受が問題となっています。

 

何とも、情けない話ですが、危機管理が出来ていないの一言です。そもそも、最初に、このスキームを考えたときに、弁護士、税理士に相談するのは、社会の常識でしょう。まして、誰かが、変だなと思うはずです。にも拘らず・・・・。

 

こうなってしまえば、今更、政治資金収支報告書を訂正するのではなく、政治家個人が、使途不明金の存在を認め、陳謝の上、雑所得として、申告納税するのが筋でしょう。もちろん、延滞税、重加算税も納税してもらいましょう。余計なお世話ですが・・・。

 

二つ目は、ドジャーズが倒産したら、後払いの契約金は、どうなるの?税金は、いくらぐらいになるの?要らぬ、お世話ですね。

 

ということで、悲喜こもごもの1週間でしたが、読書雑感は、直木賞受賞作の「心淋し川(うらさびしがわ)」です。

 

千駄木町の外れに、申し訳なげに軒を借りている。心町はそんな町だ。心川(うらかわ)と名だけは洒落たどぶ川の両岸に、貧乏長屋ばかりがひしゃげたようにうずくまっている。

そんな心町でも、六兵衛長屋は奇異な場所として映るようだ。長屋の名を出すたびに、男はにんまりと薄笑いを浮かべ、女は眉間をきゅっとすぼめる。』

 

久しぶりの時代小説です。江戸の片隅、どぶ川沿いの六兵衛長屋で懸命に生きている住人の物語6編。物語を通して、登場するのが、差配の茂十。茂十がキーマンです。

 

『忘れたくとも、忘れ得ぬ思いが、人にはある。

悲嘆も無念も悔恨も、時のふるいにかけられて、ただひとつの物思いだけが残される。

虚に等しく、死に近いもの・・・・その名を寂寥という。』

 

 

2021年、西條奈加さんが、直木賞、宇佐美りんさんが、芥川賞で、女性二人のダブル受賞で賑わいました。そのとき、「心淋し川(うらさびしがわ)」は、文庫本になって読もうと楽しみにとっておきました。

 

長屋を舞台とした時代小説の定番ですが、古さを感じさせない、新しい感覚の長屋・時代小説かもしれません。