「小説王」
小学館文庫
2019年3月11日初版
播磨国総社 射立兵主(いだてひょうず)神社は、姫路城の東側に位置し、歴代の姫路城主の崇敬を受けていた大社らしいです。
コロナの勢い、いまだ、衰えず。昨年の今頃、まさか、こんなに長く猛威を振るうこととなるとは思ってもみませんでした。季節性インフルと同じく、夏になれば終息するという専門家だっていたのだから・・・?
それが、夏が過ぎ、冬が過ぎ、春になって、もうすぐ、初夏。その間、第1波、第2波、第3波、そして、いま、第4波・・・感染者のピークは、その都度、増加しています。医療は、その都度、崩壊と言っています。
イギリスでは、ワクチン接種率が50%(日本は、1%)で、感染者数が、2.5千人/日(最大で、50千人/日超)に減少したとのこと。えっ、それでも、2.5千人。ワクチンって効いているの?そんな疑問もチラホラ?
そうは言っても、ぼくら無知・無力な国民は、信ずるしかありません。何を??
愚痴を言っても、仕方ないので、バーチャルの世界・・・ノベルのワールドへ。
今週は、直球勝負の「小説王」です。
早見和真さん、2月に紹介しましたが、復習。神奈川出身で松山に移住して、作家活動をしている注目の作家さんです。
小説家が、小説書きの内幕を書くという・・・ちょっと、珍しいモチーフです。もう少し、踏み込むと、出版社の編集者と作家、そして、文芸出版業界の内実が、モチーフになっています。
みなさん、小説を書いてみたいと思ったことはありませんか?もしかしたら、自分でも書けるかと、思ったことはありませんか?「そんなことはない」、ほとんどの方が、そう答えるでしょう。
その昔、「小説作法」(丹羽文雄)という小説を書くためのバイブルみたいな本ですが・・・読んだことがあります。そのとき、己の才能の無いことに気づきました。そこで、ぼくは、書く人ではなく、もっぱら、読む人を選択しました。
『俊太郎は独り言のようにつぶやいた。
「小説王かな・・・、しいて言うと」
長い沈黙のあと、弾けるような笑い声が耳を打った。
「はぁ?なんだよ、それ。バカじゃないの!」
そう叫んで、しばらく笑うだけ笑ったあと、豊隆は吐き捨てるように言い放った。
「言っとくけど小説なんて誰のものでもないからな。書いた人間のものでもないし、ましてや編集者のものでもない。読んでくれる人だけのものだ。小説王って、いったいどんな王様だよ」』
俊太郎と豊隆は、幼友達。俊太郎は、三流編集者。豊隆は、アルバイトで生活する売れない作家。
小説の印税は、1割。新人作家は、初版が、5千部から1万部。単行本1700円で、重版がなければ、100万円程度。その小説を生み出すのに、1年かかれば、年収は、100万円です。仮に、出版にできたとして・・・。
それでも、小説を書く。その思いが爆発する「小説王」です。