「スキマワラシ」

「スキマワラシ」

恩田陸

集英社文庫

2023年3月25日第1刷

 

福田川河口

久しぶりに、所用で垂水に行きました。ついでに、垂水の海浜公園をブラブラ。福田川の河口には、ボラがチラホラ。遠くには、明石海峡大橋の全景が見えます。

ここは、恋人岬って言うらしいですが、そんなロマンチックなイメージではなかったような?すぐ横は、垂水区の体育館、その横は、テニスコートです。20年ぐらい前に、ここで、テニスをした記憶が・・・。

 

垂水での所用とは、6回目のワクチン接種です。接種券が届いたのでどうしようかな?と迷っているうちに、予約が取りにくくなって、はじめての場所ですが、垂水年金会館会場の予約が取れたので、行ってきました。

 

思えば、ハーバーランド会場(1回目)、ノエビア会場(2・3回目)、近くの区の設置会場(4・5回目)と、会場がバラバラです。そのとき、そのときに、コロナ禍の歴史を感じています。

 

それはともかくとして、垂水は、30代を過ごした思い出の地です。駅前は、再開発ですっかり変わってしまいました。昔懐かしい「垂水廉売市場」は、すべて取り壊されて、今、再開発工事の真っ最中。

 

「垂水廉売市場」は、小さな個人商店が、狭い路地の両側に並びその路地が迷路のように入り込んでいました。都会育ちの細君は、ちょっと、引いていましたが、ぼくは、対面の買い物がお気に入りでした。今は、細君も、懐かしがるようになりました。

 

昭和は、遠くに行ってしまいます。

 

そんなお話が、恩田陸さんの「スキマワラシ」です。

 

「スキマワラシ」は、「座敷童」の現代版のような妖怪?ビルの解体現場などに現れる白い夏服を着て、麦わら帽子をかぶり、捕虫網、胴乱(どうらん)を持った少女です。

 

ここで、豆知識。胴乱(どうらん)って、ご存知ですか?皆さんは、実は、毎朝、見ています。そう、「らんまん」の主人公が、肩から掛けている採取した植物を入れるブリキの入れ物です。

 

主人公は、古道具屋を営む兄弟。兄は、纐纈(こうけつ)太郎、弟は、散多。兄は、見たものを写真で記憶する。弟は、ある古いものに触れると奇妙な体験をする。

 

この兄弟が、戦前に建てられたホテル(モデルは、甲子園ホテル)のタイルを巡って、その謎を追いかける。この謎には、亡くなった建築家の両親が関係しているらしい。そして、謎の少女。

 

『なんだか奇妙な気分になった。

この景色、覚えがある。

僕は必死に記憶を探り、思い当たった。

そうだ、新橋のビルのタイルに触れて、若い頃の両親を見た時のあの感じだ。

そう気付いて、得体の知れない不安がどっと押し寄せてきた。

と、その瞬間。』

 

 

恩田陸さん、真骨頂のファンタジックミステリー小説でした。

 

この本のカバーデザインのフォントが、「東京バンドワゴン」(小路幸也)のフォントと似ていたので、書店で目に付いたのですが、同じデザイナーかな?

 

これも、紙書籍の楽しみ方。