「少年と犬」
馳 星周
文春文庫
2023年4月10日第1刷
桃太郎
伯備線の接続に時間があったので、久しぶりに、岡山駅周辺をブラリ。桃太郎さんは、今回で見納めかも。西口に回って、奉還町のアーケード街もブラリ。何とも、レトロなアーケード街です。
それでも、お洒落なカフェやゲストハウスなどがチラホラ。昔ながらの駄菓子屋、古いレコード店なども健在。
「さくら」で、岡山へ。自由席は、三分の一が、白人系の外人さんです。姫路駅での乗り降りが多かった。やはり、世界遺産の威力は、すごい。
コロナが、収束して、外国人旅行者が目立つようになりました。神戸でも、よく見かけますし、岡山にも。
東南アジア系のツーリストは、団体さんが多いですが、白人系は、家族、カップルなど少人数が多いようです。これは、お国柄でしょうか?
夕方、時間も悪かったのか、倉敷の美観地区は、閑散としていました。阿智神社のある鶴形山の「椿」という古民家料理屋で、森田酒造のお酒を愉しみながら、しばしの歓談。
いい気分で、とんぼ返りの「こだま」で帰神。
中国人ツーリストが、まだ、居ませんが、うむ、今が、丁度いいかも。
余談は、ここまで。
3年前の直木賞の受賞作、「少年と犬」。やっと、文庫本なって平積みされていたので、買うことができました。
やあ!面白かった。
おまけに、涙、ボロボロ。鼻水、ぐしゅぐしゅ。しかも、電車の中で、テッシュが足らなくなって、ハンカチまで動員。正面の乗客が、怪訝そうに・・・と思うだけで、誰も、注目していないかも。
だいだい、子供の成長、配偶者との別れ、動物との別れなどのテーマは、ドライアイが解消されるほど、泣いてしまうのです。
そもそも、3年前に、ぼくの相棒(ダックスフンド)と別れてから、動物小説と思しきものは、手を出さなかったのですが、ついつい。直木賞受賞作だし。
『犬だ。薄汚れ、ガリガリに痩せている。どこか怪我をしている様子でもあった。
「どうした?怪我でもしたか?」
柔らかに口調で語りかけながら犬に近寄っていく。
雑種のようだった。シェパードに和犬をかけ合わせたような見かけだ。今は骨と皮だけだが、健康状態が良ければ、体重は二、三十キロというところだろう。
犬が上目遣いに内村を見た。尻尾がゆらゆらと揺れた。人には慣れているようだ。』
埋め込まれたチップによると犬の名前は、「多聞」。宮城県出身。大震災で、飼い主と別れたようである。それから、南に向けて各地を転々としているようだ。その道中で、様々な人間と出会い、人と犬の絆が生まれます。そして、別れる。
出会いと別れを繰り返しながら、なぜ、「多聞」は、南に向かうのか?
小説は、短編連作で、思いもよらぬ(うすうす気づきながらも?)結末を迎えます。そのとき、読者は、さらに滂沱の涙を流すことになります。完全に、作者の罠にはまったように。