「クローバー」

クローバー

「クローバー」
島本 理生
角川書店
平成19年11月12日発行
1,300円(神戸市立図書館)

小説を読むときには、「あとがき」を先に読むと、例えば、その小説が脱稿するまでの裏話を知ることができます。この小説は、当初、雑誌「野生時代」の青春小説特集で、読み切り短編として掲載されたそうです。ところが、島本さんの筆が乗ってしまったのでしょうか、1話で収まりきれないで、結局は、8話の連載になったそうです。そのため、最初の1話が、小説としては完結しています。ところが、その後、小説が、どんどん成長していってしまったという感じを受けました。

父と華子、そして僕の三人はとても似ている。だけどそこに母が交ざると、途端に僕ら一家は特別な華やかさに包まれる。
そして僕はふいに思う。僕らはまるで、三枚だと見向きもされないのに、一枚増えただけでもてはやされる四つ葉のようだと。
もっとも母の華やかさが、僕らに幸福をもたらすだけかというと、けっしてそんなことはないのだけれど。

読み切り短編として、書き始めたと小説の一節ですが、「クローバー」という小説のレッテルの由縁がここにあります。この下りからは、家族の関係する小説として展開するのかなと思わされますが、この一節が意味を持つのは、最後の一節にありました。
読了して、この小説は、そのまま、テレビドラマのシナリオになっている。読みながら、配役まで考えてしまって、そのドラマを見ているような感覚で読むことができました。
「冬冶」二宮和也「嵐」) 小説の主人公である「僕」は、静岡から上京して国立単科(工学)大学に通う大学生です。東京では、双子の姉の「華子」と同居生活をしています。高校時代の失恋の経験から、恋に臆病になっていますが、「雪村容」と出会ってから、将来への悩みと交錯しながら、恋の扉が少しずつ開かれていきます。
「華子」上野樹里 「冬冶」の双子の姉です。大学生ですが、合コンが日常、常に、新しい恋を追い求めています。弟の「冬冶」をぐいぐい引っ張っていきますが、その反面、弟が居ないと、何かが欠けているようです。
「雪村容」堀北真希 「冬冶」の大学の同級生です。「量子力学」のレポートの貸し借りから「冬冶」とのほのかな青い恋愛があるのかないのか?父親との二人暮らしで、少し、奥手な女性ですが、「華子」の生き方に触発されます。
「細野有季」矢沢英明 「華子」に一目ぼれした公務員です。その風貌から「華子」は熊野と呼んでますが、ストーカー並みの強引さから、徐々に、「華子」とのお付き合いが始まります。
「藤森」浜田岳 「冬冶」の同級生です。「冬冶」に常にまとわりついていますが、お目当ては「華子」かも?
「金森佐和子」多部未華子 合コンで「冬冶」と知り合うが、今ひとつ「冬冶」との関係がギクシャクしている。
登場人物の紹介で、この小説のイメージが湧いてきたでしょうか?どちらかのテレビドラマのプロデユーサの方、この配役でドラマ化してはいかがでしょうか?
学生時代の淡い青春の思い出が蘇るような小説でした。