「桐島、部活やめるってよ」

tetu-eng2013-09-08

桐島、部活やめるってよ
 朝井 リョウ
 集英社文庫
 2012年4月25日第1刷
 2013年1月31日第8刷
 476円(税別)

 漸く、酷暑の夏が終わり、夕方には、秋風が吹くような季節になりました。いよいよ、読書の秋です。その前に、低気圧、台風の影響により、各地で、大雨、竜巻などの想定外の気象現象により不幸にして災害をこうむった方々にお見舞い申し上げます。「災害は忘れたころにやってくる」とは、物理学者寺田寅彦の警句として有名ですが、実は、寺田寅彦全集をひっくり返しても、この警句が見当たりません。随筆には、災害に関するものが多々ありますが、どこかの講演会か何かの時に発言されたのかもしれません。まあ、とにかく、予防には怠りなく、と言っても、「忘却」も人間に与えられた意味深い機能ですから、「万事塞翁が馬」ということでしょうか?

 さて、読書の秋に戻りますが、とにかく、読みたい本が、机の上に平積みされて、それはそれで「幸せ」な気分ですが、なかなか趣味(テレビドラマ、テニス、ウォーキング、ウクレレ、カラオケなどなど)が多くて、本を読む時間がありません。1週間に1冊が精一杯。そのうえ、「読書雑感」の執筆(そんな大層なものではないか・・・?)して、挿絵の1枚を書こうと思うと、これもまた、大変。神経衰弱(自称)の僕が、ハムスターのように車輪の中を走っています。「断捨離」が必要ですね。まあ、そのうち!

 朝井リョウさん。2013年第148回直木賞を「何者」で受賞。えっ、「何者」?何故か、読んでないのでね。ところが、最近、話題の人です。デビュー作、「桐島、部活やめるってよ」は、早稲田大学の学生の時に上梓して、2009年の小説すばる新人賞を受賞。直木賞は、就職後、サラリーマン作家として受賞。いまだ、サラリーマンとして執筆活動も頑張っているというツワモノです。まあ、そもそも、作家のみで「オマンマ」が食えるようになるのは、大変なことだそうです。

 「桐島、部活やめるってよ」は、17歳の高校生の青春群像で、5人の主役が入れ替わる連作短編小説です。なぜか、最後の一人が4歳の少女になるのですが、これ、よく解りません。バレー部のサブのリベロの小泉風助は、桐島が部活をやめたのでレギュラーに抜擢、ブラスバンド部の部長の沢島亜矢は、ちょっと、失恋、映画部の前田涼也は、映画甲子園で特別賞を受賞するが、パットはしない「おたく系」、ソフト部の宮部実果は、家庭に事情を抱えながら四番を目指し、野球部の菊池宏樹は、毎日、野球部のバッグを抱えて登校するユーレイ部員、最後に、バトミントン部の東原かすみ〜14歳〜中学時代。何故か、桐島は、現れません。

『〜前田涼也〜
 僕にはわからないことがたくさんある。
 高校って、生徒がランク付けされる。なぜか、それは全員の意見が一致する。英語とか国語ではわけのわかんない答えを連発するヤツでも、ランク付けだけは間違わない。大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部。
 上か下か。
 目立つ人は目立つ人と仲良くなり、目立たない人は目立たない人と仲良くなる。目立つ人は同じ制服でもかっこよく着られるし、髪の毛だって凝っていいし、染めていいし、大きな声で話していいし笑っていいし行事でも騒いでいい。目立たない人は、全部だめだ。
 この判断だけは誰も間違わない。どれだけテストで間違いを連発するような馬鹿でも、この選択は誤らない。
 なんでだろうなんでだろう、なんて言いながら、僕は全部自分で決めて、自分で勝手に立場をわきまえている。
 僕はそういう人間だ。そういう人間になってしまたんだ。』

 最近の高校生は、大変ですね。40年以上前の高校生は、どうだったかな?もう、忘れてしまいましたが、同じだったのかも。ただ、その時は、そんなことを深く考えることがなかったのかもしれません。僕は、男子校だったので、とくに、異性のことで、何か、悩んだことは記憶にないですね。ただし、大学に入学して、最初の講義の時、横に女の子が座っているということが、極めて、居心地が悪かったのは覚えています。