「泣かないで、パーテイはこれから」

泣かないで

「泣かないで、パーテイはこれから」
唯川 恵(kei yuikawa)
文春文庫
2010年1月10日第1刷
495円

恋愛小説の多くは、何故、女性が主人公なのでしょうか?男性が主人公の恋愛小説って、漱石の「三四郎」かな?って「三四郎」を恋愛小説って言っていいのか?疑問ですが?そうそう、石田衣良さんの小説には、男性が主人公(一人称「わたし」)のものがありますが、それでも、やはり相手の女性が主人公になってしまいます。まあ、恋愛小説の読者は、圧倒的に女性が多いのでしょうから、そうなのかもしれません。私は、どういうわけか、結構、恋愛小説を読みますよ。ひょっとして、ロマンチストかも??
そうそう、朝日新聞の季刊誌「アスパラ」で読んだことがありますが、アンチエイジングの特効薬は、「恋愛」をすることだそうです。「恋愛」と言っても、電車の中で「あっ、かわいい子だな」と思う程度でもいいそうです。それ以上に、仲良くなったら、(そんなことを気にする必要は、まったく、ありませんけれども)いろいろと面倒なことになるかも。結局、面倒を避けて、私は、恋愛小説を読みながら、「疑似恋愛」を楽しんでいるのかも。

『二日前、失業した。
 そしてゆうべ、恋人に「好きな子がいるんだ」と言われた。
 小さい時から運が悪かった。
 宿題を忘れたときに限って、先生に当てられた。次に好きな男の子、という番になって、フォークダンスの曲が終わってしまう。みんなで泳ぎに行こうと約束すれば、生理で行けなくなり、受験の朝、大渋滞に巻き込まれて遅刻しそうになった。就職だって、あと二年も早く生まれていたら、もっと楽だったに違いない。』

高宮琴子は、外資系の貿易会社に勤める27歳のOLでした。つい、2日前までですが。その会社が、社長の横領で倒産してしまいました。その日は、大騒動です。琴子も、何が起こったのか、右往左往。あまりにも突然の出来事でした。おまけに翌日、励ましてもらおうと思っていた恋人にふられてしまいます。「超、最悪。」ここから、琴子の就職活動と恋愛活動の大奮闘が始まります。
この小説は、1995年に上梓されています。ちょうど、バブルが崩壊して、「就職売り手市場」から「就職氷河期」に突入した頃です。最近の、2008年世界同時不況による「就職大氷河期」と世相が似ているので、琴子の就職活動の悩みが、まったく、現代と同じで古さを感じません。唯川さんの小説は、何となく、女性が元気になるような作品です。この小説を「肩ごしの恋人」(主演:米倉涼子)のようにテレビドラマにするとすれば、主演は、柴咲コウが適役だと思います。

『ずっと誰かのせいにして来た。不景気のせい、無理解な経営者のせい、社会の仕組みのせい。女というだけで、年齢が合わないというだけで、やる気も才能も見せようとはせず、いとも簡単に「NO」と拒否する。その理不尽、その無理解。
私はこんなに頑張っている。だから私は悪くない。悪いのは私以外の何か、いいやすべてだ。
そうやって誰かの、何かのせいにしなければ、怒りも失望も胸の中に納められなかった。それだけが私を奮い立たせるエネルギーでもあったのだ。』