「ラストラン」

tetu-eng2014-05-11

「ラストラン」
角野 栄子
光文社文庫
2014年1月25日発行
440円(税別)

 角野栄子さんは、ジブリアニメで大ヒットした「魔女の宅急便」の著者です。児童文学ですね。「魔女の宅急便」を観たときは、それまでのアニメ映画との違いに、驚きましたね。主題歌もユーミンの「ルージュの伝言」、エンデイングは、「やさしさに包まれたなら」。両曲とも、僕のウクレレの定番曲ですね。「あのひとの♪ ママに会うために♪ (ジャカジャカじゃん♪)」。なんちゃって!

『もう一度、バイクで思いっ切り走りたい!風をまともに受けて、走りたい!自分が道か、道が自分かわからなくなるような、あの不思議な一体感をあじわってみたい。
 やっちゃおうかな、そうよ、私のラストラン!
 思いついたらもうじっとしていられない。すぐ、乗りたい。この気持ちは、二十三で、免許を手にしたときから全く変わっていない。』

 「私のラストラン!」を決意したのは、御年七十四歳の山野イコさん。早速、オートバイ屋さんに出かけて、真っ赤な派手なボデイの250ccのバイク、赤のフルフェイスのヘルメット、真っ黒の革のライダースーツを購入。真っ赤なカシミヤの薄手のマフラーも、プロ仕様のブーツも買いました。

 さて、その行き先は、岡山県川上。門前仲町から約640キロ。

 そこには、イコさんが五歳の時に死に別れたお母さんの実家がありました。頼りは、戦災のため1枚だけ焼け残った十二歳のときのお母さんの写真。

『写真の裏には、薄い鉛筆の文字。「岡山県 川上、北村ふみ子、十二歳」とある。』

 七十四歳のイコさんのルーツ探しの旅は、突拍子もないバイクでのラストランの旅になります。ぼくは、オートバイに乗ったことがないので、その心地よさが分かりません。自転車では、一生懸命こいでも、20キロぐらいですかね。それでも、結構、爽快ですから、オートバイで100キロぐらいで走ったら、どんな世界なんでしょうか?ぼくは、意気地なしなので、たぶん、怖くて、無理ですね。

 イコさんは、川上に奇跡的に残っていたお母さんの実家で不思議な少女に出会います。「ふーちゃん」です。ふーちゃんは、ゆうれいなのです。そう、12歳のお母さんのゆうれい。

『「あなた・・・・・この家の人?」
 やっと声が出た。
 うんと細い首がまえにかしぐ。
「お名前は?」
「ふみ子っていうの。ふーちゃんって呼ばれてる。おばあさんは?」
 息が乱れてきた。すがたかたちがあの写真の母とまったく同じだし、名前も母と同じなのだ。それなのに私をおばあさんと呼んだ。』

 さて、さて、ここから、七十四歳のおばあさん「イコさん」と、十二歳のイコさんのお母さん「ふーちゃん」の不思議な旅が始まります。

 「ゆうれい」って、なぜ、ゆうれいになるのか?それは、現世に心残りがあるから。いいじゃないか。現世とあの世をバリアフリーにして、行ったり来たりすれば。でも、見えたら、ちょっと、怖いかも。不思議な体験は、ビビりのぼくは、ご遠慮します。