「浮世の画家」

tetu-eng2017-11-26

浮世の画家
カズオ・イシグロ
2017年10月16日八刷
ハヤカワ文庫

11月にしては、寒いですね。もう、コートを着ています。昨年は、12月から着たと思うのですが、そんなことに囚われていたら、風邪をひいてしまいます。今年は、夏も冬も、どうも例年とは違うようです。

さて、早くも、年賀状の制作の季節になりました。毎年、勤労感謝の日が、年賀状の制作日です。これは、例年通り、実施しました。今年は、複合機を買い換えたので、プリントが早くできました。カラーの発色も、昨年よりは綺麗なようです。

ただ、毎年、ぼくの拙い「橋の絵」をポストカード風にプリントするのですが、今年の出来映えは、残念ながら下手の一言です。もともと、「凡人」程度なのですが、最近、絵筆を持たなくなったので、「凡人」から「才能なし」に格下げですね。

そもそも、亡き母の慰めにと思って、毎週、ポストカードに水彩画を描いて送っていたのですが、作品の発表の場を失ったため、絵を描く意欲が減退してしまいました。あとは、画材が残っただけです。

下手でも絵を描くということは、集中力と観察力を養うことができるので、「マインドフルネス」としてはお勧めだと思うのですが、何事も、一人でコソコソとやっていたのでは、張り合いというものがないのでしょう。ブログを発表の場にしてもいいのですが、ちょいと、お見苦しいかもしれません。

それはそうと、年賀状は52円ですね。普通はがきは62円なのに何故でしょうか?年賀状を出す人が少なくなっているので、販売促進ですか?郵便会社の民営化の産物ですか?62円でも、52円でも、年賀状を出す人は出すし、出さない人はそれなりだと思いますが・・・・。

ノーベル文学賞受賞作家の第二段です。

この小説は、日本がモデルになっています。或る日本人画家の物語です。士気高揚のため、戦争礼賛の絵を描いた画家が、戦後、いろんな想いを抱きながら、過去を回想する物語です。「日の名残り」と同じように、主人公の回想がストーリーのメインです。

カズオ・イシグロさんは、回想でストーリーを仕上げるのが、作風のようです。まあ、2作読んだだけですが・・・・。そうそう、イシグロさんは、作家としては寡作な方で、長編が7作、短編が1作らしいです。

『ベンチに座っているわたしは、こういう若いサラリーマンを眺めながら、口元がほころぶのを感じた。もちろんわたしは、夜もなお明るい酒場や街灯の下に寄り集まって、たぶん昨日オフイス街で見た若者たちよりも騒々しいけれども、同じくらい陽気に談笑していたあの人々を思い出すたびに、戦前の日々や、そのころの歓楽街にある種のノスタルジアを感じる。しかし、自分たちの住むこの市が復興し、ここ数年のあいだに万事が急速に活気を取り戻しているのを見ると、やはり純粋な喜びに満たされる。わが国は、過去にどんな過ちを犯したとしても、いまやあらゆる面でよりよい道を進む新たなチャンスを与えられているのだと思う。わたしなどはただ、あの若者たちの前途に祝福あれと心から祈るだけである』

イギリス人のイシグロさんの戦争観だと思います。「日の名残り」でも、同じようなくだりが書かれています。『わが国は、過去にどんな過ちを犯したとしても、いまやあらゆる面でよりよい道を進む新たなチャンスを与えられているのだと思う。わたしなどはただ、あの若者たちの前途に祝福あれと心から祈るだけである』戦勝国イギリス、敗戦国日本、いずれの国にも共通するイシグロさんからのメッセージなのでしょう。