「ツバキ文具店」

tetu-eng2018-09-30

「ツバキ文具店」
小川 糸
平成30年8月5日初版
幻冬舎文庫

すっかり秋らしくなりました。窓を開け放しで寝ていると夜風が冷たくて、目が覚めて窓を閉める。ちょっと前には、暑くてクーラーなしでは寝むれなかったのが嘘のようです。「暑さ寒さも彼岸まで」とは、よく言ったものです。そうそう、気象庁の長期予報では、今年の冬は暖冬らしいです。それは、それで、寒さに弱いぼくにとっては、朗報です。

さて、ぼくが、読みたいなっと思っていた「ツバキ文具店」が文庫本になりました。2017年の本屋大賞の第4位を受賞してベストセラーとなり、同年4月にNHKでドラマ化されました。その頃から目をつけて、早く文庫本にならないかなと、待っていたら、思ったより早くに書店に文庫本として並びました。即、買い!即、読み!です。

ちなみに、舞台は、鎌倉。鎌倉はいいね。「ヴィブリア古書堂の事件手帖」も鎌倉が舞台です。

そういえば、千葉に住んでいたころ、何度か、鎌倉に出掛けました。もう、30年前のことです。その頃から比べると鎌倉も随分と変わったことでしょう。小町通、鶴岡八幡、銭洗弁天鎌倉大仏などなど。それから、源氏山公園の散策。細君と結婚する前のとき、夫婦二人のとき、長男が赤ん坊のとき、長男が歩き出したとき、そうか、少なくとも4回は訪れたかな?武家文化の発祥の地として、京都や奈良とは違った趣がありました。また、行ってみたいですね。

NHKドラマでは、主人公「ツバキ文具店」の店主、雨宮鳩子(多部未華子)、お隣さんのバーバラ夫人(江波杏子)、鳩子の亡くなった祖母(賠償美津子)、常連の男爵(奥田瑛二)、友人の教師パンティ(片瀬那奈)、行きつけのレストランのオーナー(上地雄輔)などなどのキャスト。ゆったりとした時が流れる「いいね!」のドラマでした。

「ツバキ文具店」は、いわゆる文房具屋のほかに代書屋を生業としている。もともと、やんごとなきお方の祐筆だったとのことであり、鳩子は先代の祖母から「ツバキ文具店」と代書屋を引き継いだ。物語は、代書の依頼人と、その依頼人の事情に応じた鳩子の代書する手紙がメインテーマです。

男爵から借金の申し入れへの断り状の代書の依頼。

『男爵の雰囲気には毛筆よりも太めの万年筆の方が合っていると判断し、今回はモンブランの万年筆を選んだ。インクは、漆黒。紙は、つい先日押入れから出土したばかりの、「満寿屋(ますや)」の原稿用紙を使う。
下書きもせず、いきなり本番の紙に書き始めた。
「御手紙拝読  我が方も金欠により、金を貸すことは  一切できん  悪いことは言わない、他を当たってくれ  ただし、金は貸せんが、飯は食わせる  腹が減ってどうにもならなくなったら、  鎌倉に来い  お前さんの好物を、鱈腹食わせてやろう  これから寒くなるから、体に気をつけろ  健闘を祈る 」』

軽妙洒脱な面白い手紙ですね。ぼくも、モンブランの万年筆と「満寿屋(ますや)」の原稿用紙で、こんな手紙を書いてみたいものです。そのうち、このブログの読者の誰かに、突然、ぼくからの近況報告が届くかもしれません。

ちなみに、「満寿屋(ますや)」とは、浅草の原稿用紙の専門店。多くの文人が名前入りの原稿用紙を発注して愛用していたらしいです。