「恭一郎と七人の叔母」

「恭一郎と七人の叔母」
小路 幸也
2019年2月15日初刷発行
徳間文庫

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4月1日に新元号が発表されるらしい。いま、マスコミは、いろんな関係先に取材をかけて、新元号を他社より早く報道しようと躍起になっていることでしょう。どうせ、遅かれ早かれ、4月1日には官房長官から発表されるのだから、そんなに躍起にならなくてもいいとは思いますが・・・・。マスコミの性と言ってしまえば、申し訳ないかも。

あと、一月ほど生きながらえたら、昭和、平成、○○と三世代を生き抜いたことになります。最近のテレビ番組は、冬のドラマも終わって、「平成の時代」をテーマにした特番だらけです。考えてみたら、サラリーマン生活40年のうち、30年間が平成だったということです。稟議書を作成するとき、必ず、平成○年と書いていましたが、・・・そうそう、平成の初めは、まだ、手書きでしたが、今は、パソコンですね。

ぼくは、たぶん6月末で退任なので、平成の最後の年で、○○の最初の年に、サラリーマン生活に終止符を打つことになります。それがどうしたと言ってしまえば、そうなんですが、後年、振り返るときには、なにかと都合がいいかもしれません。

テレビ番組的な話をすれば、平成の最初の年、昭和天皇崩御されたとき(テレビのアナウンサーなどで亡くなった時という表現をする人がいますが・・・・?)。半旗を掲げるために、日の丸が売り切れになって困ったことがありました。なおかつ、旗ざおの上についている竿球(カンキュウ)を黒い布で覆い隠し、さらに、竿球の根元に黒いリボンをつける旨、総理府からお達しがあり、細君に頼んで、黒い布と黒いリボンを我が家で用意した記憶があります。今回は、ご退位とご即位なので、普通に日の丸を掲揚すればいいのでしょう。

来週は、新元号が公表さているので、新元号の余談は、次回に続く・・・と言うことで、久しぶりに小路さんの作品です。なんども書いていますが、小路さん「東京バンドワゴン」シリーズは、まだまだ、続いていますね。もう、10巻は超えているんじゃないでしょうか?小路さんの家族をテーマにした小説は、ほんのりとした独特の味があるので好きなジャンルのひとつです。今回の小説の切り口は少し変わっていますが、やはり、家族小説なのでしょう。

『更屋恭一郎には七人の叔母がいる。
その七人の叔母たちの、母を含めて八人姉妹の微妙な関係性にふと気づいたのは、恭一郎が中学一年生のお正月だ。いつもの年と同じように家を出た叔母も家族を引き連れてやってきて、賑やかな元日の夜の食事が始まった頃に、気づいた。』

 更屋恭一郎の母は、八人姉妹の長女。早くに、夫を亡くし、恭一郎は、祖父の営む造園業の実家で生まれた。そこには、母の妹・・・7人の叔母がいた。恭一郎は、それぞれ個性あふれる七人の叔母に・・・いわば、育てられた。小説の構成は、その七人の叔母のエピソードの連作です。母から始まって八女まで、順番に紹介されています。

『更屋家の八人姉妹であり、つまり母親のさき子以外は、恭一郎の七人の叔母だ。
それぞれに、それぞれの意味で個性的な人生を歩んできた。いや、歩んでいる叔母に囲まれて、そして皆に愛されて可愛がられて更屋恭一郎は育ってきた。』

 甥の恭一郎が、語る七人の叔母たちとの思い出、エピソードは、小路さんの持ち前の作風によって、明るく、楽しく、ユーモアたっぷりに描かれています。「東京バンドワゴン」のシチュエーションの変更版みたいですかね。小路さんの小説は、ちょっと休憩できる読み物です。