「朝が来る」
辻村深月
2019年12月20日第6刷
文春文庫
カーネーションは、ピンクが似合う。
5月10日は、「母の日」でした。今年は、コロナ騒動で、オンライン消費が多くなり、宅急便が輻輳しているとのことで、「母の日」のプレゼントは、自粛・・・・ではなく、5月10日に集中しないようにとのことでした。そこで、今年は、「母の日」ではなく、5月を「母の月」というそうです。
母のいらっしゃる方は、今月中は、「母の月」ということで、プレゼントはOKらしいです。といっても、ぼくの母は、現世にいないので、線香でもプレゼントしますか?そうそう、13日が、父も母も、月命日なので、お香でも焚こうかな?そういえば、父と母は、命日が同じですが、偶然でしょうか。
そういえば、東証一部上場企業のレナウンが事実上のコロナ倒産。もう、20年前ぐらいから経営不振は伝えられていましたが・・・。「レナウン♪レナウン娘が♪ワンサカワンサカ♪イエーイ♪イエーイ♪イエーイ♪」の陽気なCM。「Durban, cest lelegance de I homme modern.」とアラン・ドロンが語り掛けるCM。ぼくたち世代には、耳に残っています。
話を元に戻します。「母の日」は、母になりたくても、なることができない女性にとっては、好ましい日ではないかもしれません。この小説は、不妊治療の末、特別養子縁組を決断して、母となった女性、そして、生まれた子と別れて母となることをあきらめた女性の物語です。
『明日来るかもしれないし、一生来ないかもしれないと思っていた子どもは、広島県の病院で生まれた。連絡があり、一も二もなく受け入れたいと返事をした佐都子に、浅見が、こう聞いた。
「迎えに来ますか」
・・・・・
「お待たせしました。お子さんですよ」
わっと、感情が、洪水のように押し寄せてきた。赤ん坊の顔を、覗きこむ。
目を閉じていた。
・・・・・
「抱っこしてみますか」
手が震えた。横で棒立ちになった清和の、目の表面が赤くなって、緊張したように瞬きをやめている、その気配を感じる。佐都子の胸に、驚くほど軽くて柔らかい赤ん坊が抱かれる。
・・・・・
「かわいいなあ」と彼が言った。
その瞬間、思った。
恋に落ちるように、と聞いた、あの表現とは少し違う。けれど、佐都子ははっきりと思った。
朝が来た、と。』
ながい引用でした。四十になった清和と佐都子。六年の不妊治療という長いトンネルを抜けるため、「ベビーバトン」という養子縁組の紹介団体に登録し、ついに、赤ん坊の紹介をうけました。
特別養子縁組は、戸籍上も、実親として登録する。そのため、実親との親子関係は解消されます。様々な事情で実親が子供を育てられない環境にあるとき、子供が家庭での養育を受けられようにするための制度です。
朝斗と名付けた赤ん坊が、幼稚園に通うまでに成長したころ、無言電話が、たびたび掛かってきました。そして、ある日、「子供を返してほしい」という女性の声。